投稿日: 2017年5月17日 13:31 | 更新:2017年5月17日13:35
医療法人 渓仁会
手稲渓仁会病院
循環器内科主任部長 廣上 貢
ひろかみ・みつぐ●北成病院、榊原記念病院勤務などを経て現職。専門は虚血性心疾患の診断・カテーテル治療、末梢動脈疾患の血管内治療、構造的心疾患のカテーテル治療。
心臓の中で血液の逆流を防ぐ弁の1つである大動脈弁。この働きが悪くなる大動脈弁狭窄症において、高齢などの要因で手術が困難な患者への治療としてTAVIが注目されている。「大動脈弁狭窄症が重症化すると、通常は開胸して大動脈弁置換術を行わなければ、生命に関わる状態になっていきます。高齢化が進んだ現在では、重症大動脈弁狭窄症の4割の症例で手術が困難とさえ言われています」。そう説明する廣上貢医師のもと、手稲渓仁会病院ではこの治療を2014年6月に導入した。
TAVIは、今まで治療できなかった患者を救える可能性を持つ一方、医師の高い技術が求められる術式だ。「これは大動脈弁が石灰化した箇所に生体弁をひっかけるように留置する治療です。大動脈弁輪を破ることなくバルーンで広げた上で、生体弁に隙間を作らないようミリ単位で位置を調整し留置しなければなりません」と説明する廣上医師。もともと、同院では重症の大動脈弁狭窄症の紹介が多く、TAVIが国内で登場するまでは、バルーンで狭窄した大動脈弁を広げる治療を積極的に行ってきた。こうしたカテーテル治療の経験が同院でのTAVIに生かされている。
廣上医師の技術に加え、ハートチームとしてのスタッフの連携もまた安全性の向上には欠かせないと廣上医師は強調する。「TAVIには総合力が求められます。万が一の合併症への対応も含め、確実にTAVIを成功させるためには各スタッフが専門的なスキルを持った上で、適切に役割分担しなければならないのです」。その言葉通り、心臓血管外科医のほか状態の悪い高齢者の全身状態を術中に管理する麻酔科医や、超音波で弁の留置をサポートする日本超音波医学会認定超音波専門医などの多くのスタッフが集い、ハートチームで十分な症例検討を行ってTAVIの適用を判断し、重篤な合併症も防いできたという。アプローチ方法として、足のつけ根の動脈から生体弁を通す手法と共に、左胸部を小さく切開して心臓の先端(心尖部)から生体弁を通す手法も可能にしている。また最近は左鎖骨の下の動脈から挿入する方法も行っている。
現在同院には、道内各地から広くTAVIの必要な患者が来院しているという。「重症大動脈弁狭窄症に対して外科手術ができないといわれ、そのまま経過観察となり、日常生活が制限され、苦しんでいる高齢の方が相当多数いると考えられます」と、廣上医師はTAVIで1人でも多くの患者を救うことを目指す。
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【診療科目】循環器内科、心臓血管外科 ほか33科
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