投稿日: 2017年8月10日 15:21 | 更新:2017年8月10日16:34
医療法人社団 誠馨会
新東京病院
心臓内科部長 長沼 亨
ながぬま・とおる●2004年、山口大学卒業。日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医など。
近年、患者が増加している大動脈弁狭窄症。根治には、大動脈弁の形成や、人工弁への置換が求められる。ただ、この治療は従来開胸を要していたため、高齢の患者や全身状態の悪い患者に対しては行えなかった。それを解決する手法として登場したのが、「TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)」だ。開胸することなく、血管を通じて人工弁を大動脈弁に送り込むため、体への負担が大きく抑えられている。
同治療が国内に導入されてすぐに取り入れ、豊富な実績を挙げてきたのが新東京病院だ。「もともと当院は、できる限り開胸せず、体への負担を抑えることに力を尽くしてきた背景があります。その流れから、TAVIを導入したのも必然といえます」と語るのは、治療の軸を担う長沼亨医師。日本よりも早い時期からTAVIを行っていたイタリアへ留学して技術を学んできた同医師の経験を生かし、海外の最先端の施設と同水準の治療を実現させている。
同院の技術の高さを示す一例として、心臓へカテーテルを通す経路の選択が挙げられる。一般的にTAVIでは、胸部を少し切開して通す心尖部アプローチや、上行大動脈から通す直接大動脈アプローチといった非大腿部アプローチ、足の付け根から通す大腿部アプローチのいずれかを選択していく。
海外では、より体への負担が少ない大腿部が推奨されているが、日本ではまだまだ非大腿部アプローチが数多く行われているのが現状だ。「TAVIについてイタリアで学び始めた頃から、大腿部からの方が体にやさしいと考えており、積極的に行ってきました。現在ではほぼ全症例で行えるようになっています」と長沼医師。その中には他院で非大腿部から行われているような症例まで含まれているという。
その上で、大腿部にカテーテルを挿入する方法までこだわってきた。現在国内では、外科医が4~5㌢程切開してカテーテルを通す手法が広く行われている。それに対し、同院では針で刺すだけで済んで術後の痛みが抑えられ、傷も目立たなくなる「パンクチャー法」を早くから取り入れてきたのだ。
同手法をほとんどの症例で可能にしているのは、もともと長沼医師が、足の血管へのカテーテル治療の経験を重ねていたことが大きいという。「石灰化や狭窄を起こした血管でも、反対の足から通したワイヤーやバルーンで処置を行うクロスオーバーテクニックと呼ばれる手法を用いることで、パンクチャー法による大腿部アプローチを可能にしています」と語る長沼医師。この手法は長沼医師のイタリア留学時の恩師アントニオ・コロンボ医師が最初に報告したものであり、国内で導入したのは同院が初めてであることから、各地での指導や学会発表なども積極的に行っているという。
カテーテルを通す手法だけでなく、人工弁の扱いに長けているのも注目すべき点だ。長沼医師は国内で導入されている2種の人工弁両方を扱っているだけでなく、両販売元から指導的な役割も任されている。「病状によって適した弁は異なります。両方の弁に精通していることで、より適した選択が可能になるのです」。現在大腿部穿刺から人工弁留置まで30分かからないことが多いという。
そして、長沼医師だけでなく、治療に携わるスタッフ全員が豊富な経験を持っていることもまた、治療の質を支えている。一例として、麻酔科医の協力のもとで、全身麻酔下ではなく、局所麻酔下でのTAVIを可能にしていることも挙げられる。それにより術後の回復がさらに早まり、患者は術後3時間で飲水、翌日朝から食事やリハビリテーションが可能。最短で術後3日での退院も目指せるという。
長沼医師を含め、同院の医師は、こうした高度な治療で多くの患者を救うだけでなく、海外の学会での論文発表を積極的に行うなど、研鑽に余念がない。「海外での交流や学会発表も積極的に行い、日本の医師も負けてないぞと言うことを示していければと思っています」と世界を見据え、医療の質のさらなる向上を目指し続けている。
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