投稿日: 2017年10月30日 10:29 | 更新:2017年10月30日10:29
社会医療法人財団 石心会
埼玉石心会病院
副院長(患者サービス担当)低侵襲脳神経センター長脳神経外科 部長石原 正一郎
狭山、入間、所沢、飯能、日高の各市からなる埼玉西部医療圏。埼玉石心会病院は、同地域で高度な急性期医療を提供する中核病院である。2017年秋からスタートする新病院では、低侵襲脳神経センターが開設される。
医学全般で進んできた低侵襲化の傾向は、脳神経外科の分野でも同様である。「脳は一度壊れると、なかなかその機能を戻すのが難しい臓器です。患者さんの言語、記憶、識別や判断などの高次機能を温存し、人が人らしく生きていける状態を最大限残すことを目的として、低侵襲脳神経センターでは脳や身体に、より負担をかけない治療を第一選択とする低侵襲治療方針を進めています」と、この分野で20年以上の経験を持つ同院副院長兼低侵襲脳神経センター長/脳神経外科部長の石原正一郎医師は話す。「脳血管内手術や神経内視鏡手術などの開頭しない治療だけではなく、開頭を要する治療の場合もなるべく脳に負担をかけない手術法を目指しています。患者さんは、より回復が早く短い入院期間で、早期の社会復帰が見込めます」
脳神経外科における主要な低侵襲治療には、脳血管内治療と神経内視鏡治療の2つがある。血管内治療の対象となる疾患は、脳動脈瘤や脳動静脈奇形、頸動脈狭窄、頭蓋内主幹動脈狭窄、硬膜動静脈瘻、そして最近増えている急性脳梗塞である。
通常は足の付け根の大腿血管から頸部を通って頭部血管にカテーテルを誘導し、その中へさらに細いマイクロカテーテルを入れて病変部まで進め、コイルによる動脈瘤内の塞栓や、脳梗塞の原因となる狭窄部の拡張、また血管奇形への血流遮断などを行う。開頭手術に比べ手術時間が短く、石原医師は「デバイスの発達とともに非常に的確で速い治療が可能になってきています」と語る。
次に神経内視鏡治療だが、対象となる疾患で代表的なものが水頭症で、ほかに脳室内腫瘍、脳内出血、脳室内出血、脳下垂体腫瘍などがあり、最近は頭蓋底病変にも適応が広がっている。「日本の医師は、内視鏡でも特に軟性鏡(ファイバースコープやビデオスコープ)による治療技術が非常に優秀です」と石原医師は話す。
このほか開頭を要する治療(脳動脈瘤クリッピング術)における脳への負担をかけない術式として、鍵穴手術がある。「極小の孔を開け、開頭範囲も極めて小さい。脳を過度に押したり引っ張ったりすることもありません。こうした局所的開頭での治療には、多くの脳神経外科医が取り組んでいます」(石原医師)。
低侵襲脳神経センターに導入された設備として目を引くのが、MRI、CTや血管造影、そして開頭手術や内視鏡治療、ナビゲーションをすべて一つの部屋で行うことが可能な、最新型ハイブリッド手術室である。「患者さんが動く必要はありません」と話す石原医師は、続けて「この充実した環境で、日本の脳神経外科医の持っている外科技術や脳血管内治療、さらにそれらを組み合わせた新しい治療法の開発をより推し進めたい」と決意を示した。
その現場では術者、助手、麻酔科医や技師、看護師、臨床工学技士などパラメディカルの人たちが、阿吽の呼吸でチーム医療を行う必要がある。次にやるべきことをスムーズに行い、患者さんに必要な手術がよどむことなく流れていくことが一番望ましい状況だと石原医師は語る。「その意味でもチームの熟練は重要です。最終的にはこの施設で、自分たちのチーム医療を最高レベルに到達させたいと思っています」
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