• 鹿児島県

米盛病院

命と人生に向き合い
救急疾患から日常的な症状まで幅広く対応

充実した救急医療体制で24時間患者を受け入れる

 鹿児島市の米盛病院は、1969年に「米盛整形外科医院」として開院。2014年の新築移転を機に、救急医療に注力し、脳神経外科、循環器内科、心臓血管外科などの診療科を開設。さまざまな症例に対応するとともに、24時間365日体制で救急患者の受け入れを行っている。

 県のドクターヘリを補完する役割も担う民間救急ヘリ「レッドウイング」を導入し、離島や遠隔地の重症患者の受け入れも積極的に行っている。またCTや血管造影装置が設置され、検査から治療、初期手術まで可能なハイブリッドERを備え、全国有数の救急医療体制が整っている。

著しい進展を遂げる超急性期脳梗塞治療

 脳神経外科は2013年に開設。脳卒中と頭部外傷の診療を柱とし、脳腫瘍や神経血管減圧術などを含め幅広く診療を行っている。中でも超急性期脳梗塞治療の取り組みは目を見張るものがある。同科では他科および他職種スタッフと連携し、正確性を高め、かつ迅速な治療を行える体制を整え、同院が自ら掲げた「患者到着からt‐PA静注療法(静注血栓溶解療法)開始まで30分以内、脳血管内治療まで60分以内」という目標を2020年には達成している。2021年度には医師増員により血栓回収療法を行える体制をより充実させ、前年度比で脳神経外科領域の救急搬送件数は2割以上、脳血管内治療件数は3割以上とそれぞれ増加した。

「今後は脳卒中のエキスパートを目指す若手医師などの育成にも注力し、脳卒中診療をより一層充実させることで地域に貢献していきたい」と脳神経外科の井上泰豪医師は語る。

重篤な心臓・血管疾患に対しハートチームが結束して治療

 心疾患の救急対応では、心臓血管外科や循環器内科の医師を中心に看護師、コメディカル、事務員がハートチームとして結束。

 血管外科・心臓血管外科では、大動脈瘤・大動脈解離に対して、患者の病態によって治療法を選択している。「大動脈瘤・大動脈解離は患者の生命に直接関わる疾患ですから、まずは治療のスピードが重要です。速やかに治療をするためには、チームが一丸となって進めていく必要があります。以前はこの疾患の治療は、胸部または腹部を大きく切り開く、人工血管置換術を用いていましたが、現在はカテーテルを用いたステントグラフト治療が主流となりつつあります。鼠径部に4~5㌢程度の切開創をつけるだけですから、患者負担の少ない治療法です。当院でも約7割はこの術式で対応しています」と血管外科・心臓血管外科の山本裕之医師は話す。

 循環器内科では急性心筋梗塞などの救急症例や重篤症例に対しては、カテーテルを用いた経皮的冠動脈インターベンションによって治療を行っている。心筋梗塞の治療においては、ほとんどのケースで病院到着から血流再開まで、60分以内という目標をクリアしている。

 また下肢の血管が狭くなったり、閉塞してしまったりする、下肢閉塞性動脈硬化症のカテーテル治療も増えている。「この疾患は、動脈硬化によって腸骨動脈や大腿動脈などの下肢血管が狭まり、血流が低下した状態です。足の筋肉に血流が行かなくなるので、足がおもだるくなったり、痛みや痺れが出たりします。進行すると動脈が閉塞することもあります。そうなると足に壊死する箇所が出て、最悪の場合切断を余儀なくされることもあります。治療法としては、血管が狭まった箇所にカテーテルを挿入して病変部を拡げたり、ステントを留置したりして、血流を回復させます」と循環器内科の尾辻秀章医師は話す。

 不整脈の治療に関しては、病態によってカテーテルで患部を焼灼するアブレーション治療とペースメーカーなどを埋め込むデバイス治療を選択する。「現在の主流は、アブレーション治療です。3Dマッピングシステムに事前に撮影したCTのデータを読み込ませ、立体画像にしてモニターに映し出します。スタッフ全員でモニターを注視して治療を進めますので、患部を的確に捉えることができます」と循環器内科の田上和幸医師は語る。

 同院のコンセプトは「一秒を救う。一生につなぐ。」だ。このコンセプトのもと、技術の研鑽と設備の充実を重ね、地域にとって今後ますますなくてはならない存在となるだろう。

取材・文/牧野晋一

脳神経外科

井上 泰豪

いのうえ・やすひで●日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医ほか

血管外科・心臓血管外科

山本 裕之

やまもと・ひろゆき●日本血管外科学会認定心臓血管外科専門医ほか

循環器内科

尾辻 秀章

おつじ・ひであき●日本循環器学会認定循環器専門医ほか

循環器内科

田上 和幸

たのうえ・かずゆき●日本循環器学会認定循環器専門医ほか

医療新聞社
編集部記者の目

2014年の新築移転以降、脳神経外科、心臓血管外科、循環器内科などを設置し、救急医療の充実に力点を置いてきた米盛病院。診療科の拡充とともにスタッフも増え、対応できる疾患も年々増加している。例えば心臓血管外科では、大動脈解離のような人命に直結するものから、下肢閉塞性動脈硬化症のようなQOLに深く関わる疾患まで、幅広い対応が可能となっている。医師だけでなく、看護師、コメディカル、事務員に至るまで、命を救うために一秒でも早い治療をすべく、チーム医療を実践している。

Information

米盛病院

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【診療科】救急科/内科/脳神経外科/循環器内科/血管外科/心臓血管外科/整形外科 ほか(計19科)

【病床数】506床 【診療時間】9:00~12:30/14:00~18:00

【休診日】日・祝
※診療日時および受付日時は診療科によって異なります。
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