カプセル内視鏡は、増え続けるクローン病に有用 ~低侵襲なので、経過観察にも効果的~ Vol.1 -2-

 
■増加しているクローン病
 
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 わが国のクローン病の患者数は1976年には128人だったが、2011年には34,721人(公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター調べ)に達しており、年を追うごとに増加している。
 小腸の代表的な疾患とも言われているが、「診断が難しい病気だった」とJACEの寺野理事長は話す。「ひどい下痢や原因不明の発熱が続いても、それだけでは確定できないことが多いわけです。熱が出る原因はヤマほどありますから。ましてや、それがクローンかも‥と考える医者も少なかったと思います。とはいえ、これまでは、私たちも「ひょっとしたらクローンかも知れない‥」と頭をよぎっても、小腸の造影検査となると大変でした。でも、カプセルを飲めば診断できる、となった今は勧めやすくなりました。見つけやすくもなったと思います」。

 
 
■テンシーカプセルの登場がターニングポイント
 

 福岡大学筑紫病院の松井敏幸教授は、カプセル内視鏡の有用性についてこう語る。「クローン病の患者さんのうち、約7割は小腸になんらかの病気を持っています。それを非侵襲的に診てあげられるようになったのはとても価値があります」。
 小腸カプセルが保険適用されたのは2007年だが、当初認可されていたのは原因不明の消化管出血(OGIB)で、クローン病には適用されていなかった。その理由は、カプセルが体外に排出されない「滞留」が懸念されていたから。しかし、パテンシーカプセル(※1)が登場して事態が一変。「クローン病は小腸に激しい病変を起こすことがあって、カプセルが滞留をきたすこともあります。そうなると逆に患者さんを苦しめることにもなりますので保険にも適用されなかったんですが、パテンシーカプセルが開発されたことで、これを併用すればクローン病に適用してかまわない、と比較的スムーズに採用されました」(松井教授)。

 
 
■カプセル内視鏡、最大のメリットは低侵襲性
 
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 近年、クローン病の患者数は増えているが、「すべての患者さんに内視鏡で検査するというわけにもいかない」と松井教授は言う。「小腸が検査できるダブルバルーン内視鏡があります。しかし、麻酔をしないといけませんし、粘膜に傷をつける可能性もあります。なんとか侵襲が少ない検査でできないか、という思いはずっとありました。実際、“検査を受けたい”と言う患者さんの中にも保険が適用されるのを待っていた方も多かったですから。そういう点からも、クローン病に適用されたのはとても大きいかったと思います」。
 低侵襲性は何度も検査をする患者さんにとっても意義が大きい。「下痢が続いている、お腹が痛い‥と病院に来た患者さんに診断をつけてあげないといけません。で、大腸の検査をしても胃カメラをしても異常がない場合は小腸を診ることになるわけです。診断をする際にはダブルバルーン内視鏡を使うこともあります。でも、もうクローン病とわかっていて治療している患者さんが、どの程度治ったかを確認するときは、もうダブルバルーンを飲まなくても、カプセルで充分確かめられます。クローン病は再発しやすいし治りにくいので、症状がなくても検査を受けてほしい病気です。ただ、余計な検査や治療をしたくないので、治療を続けるかどうかを決めるためにカプセルで検査してみましょう、と話します」。

 
 
■ダブルバルーン内視鏡とのすみ分け
 

 カプセル内視鏡が普及してきたことで「クローン病にかかわる医師側の意識も高まってきた」とJACEの寺野理事長は語る。「ダブルバルーン内視鏡は治療ができるし、カプセルより画像も鮮明ですが、挿入するのに高い技術が求められます。つらい検査だし全身麻酔下で行うから、すべてのケースに簡単に実施するというわけにはいきません。でも、カプセルはそういう心配がないからスクリーニングとして勧められます。そして、なにか疑いがあれば生検や治療をダブルバルーンで、という住み分けもできるようになってきました」。クローン病は、治療期間が長い。診断から経過観察まで検査するシーンも数多い。増え続けるクローン病の患者さんに対応するためには、適切に読影できるドクターや技師の育成が欠かせない。関心を持つ医療従事者が増えていくよう願うばかりである。

 

(※1)パテンシーカプセル‥‥
消化管の狭窄又は狭小化を有する又は疑われる場合においてカプセル内視鏡検査前に消化管の開通性を評価するための崩壊性カプセル。排出された際にボディが崩壊されていなければ「開通性あり」と判定されてカプセル内視鏡検査を実施することができる。狭窄部で停滞した場合においても、嚥下後、100時間~200時間以内に自然崩壊し、非溶解性のコーティング膜だけが自然排出される。
参考:コヴィディエンジャパン株式会社(旧ギブン・イメージング株式会社)のホームページより

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