読影力の向上に欠かせないのは「数」と「質」 過去の症例は格好の勉強材料 Vol.2 -3-

 
大阪医科大学 消化器内科
助教(准) 能田貞治
 
読影は丁寧に
 
20151108_vol.2_p4_能田先生

 当院がカプセル内視鏡を導入したのは2006年12月です。これまで累積で1200件ほど行ってきました。年間の検査件数は実臨床で100~120件、小腸用カプセル内視鏡の保険適用が拡大されて年々増えています。平成24年からはオンラインストレージを活用した読影ネットワークを構築し、関連施設の読影も行っています。今、ネットワークで連携している施設は8施設。今年の春には10施設になる予定です。当院から出向している若いドクターがいれば一次読影をしてもらいます。 
 私は二次読影を担当していますが、1症例の読影にかかる時間は30分から1時間半。症例により大きく異なります。ひとまず診断をつけるだけであれば1時間半もかかることはありませんが、具体的なデータを収集するため、たとえば、クローン病であれば潰瘍が複数存在し、同じ病変が何度も写るようなケースもありますから、その数を正確に把握するなど、細かいところまで読影していくと結果的に時間がかかってしまいます。こういう場合は時間を度外視するようにしています。

 
 
読影上達に向けた心構え
 

 カプセルの読影は静止画を動画のように流して行うので、読影のスピードは各個人に委ねられます。画像を速く流せば短時間で終わりますし、ゆっくり流せばそれだけ時間がかかります。
 初学者でも丁寧に読んでいる人であれば、20~30例読んでいくと所見がしっかりと拾えるようになりますが、慣れていくことでかえって見落としが多くなる人もいます。あまりにも早く画像を流しているために見逃しているようです。読影力が身につくまでは、時間がかかっても丁寧に読んでいくことが上達の近道だと思います。 

 
 
読影力の向上に欠かせないのは「数」と「質」
 

 読影力を高めるために「数を読む」ことが大事なのは言うまでもありませんが、様々な疾患や特殊なケースを経験することも重要です。
 カプセル内視鏡は、腸管の蠕動運動で動き、無送気での観察となるため、スコープ型の内視鏡とは病変が違った見え方をすることがあります。また、同じ病変でもカプセル内視鏡の進行方向に対してレンズの向きが順方向か逆方向かで見え方が変わる場合もあります。これらのカプセル内視鏡ならではの病変の見え方を理解することは重要です。
 また、カプセル内視鏡で「何か病変がある」とわかっても、「なぜこのように見えるかがわからない」というケースがあります。それが他の検査で診断がついたとき、画像をもう一度振り返ると「だからそう見えたのか」と学ぶことができます。この経験が次の読影に活きてきます。過去の症例は格好の学習素材になります。数も大事ですが、読む症例の質も重要です。初学者のドクターには、できるだけ労力を惜しまず、様々な症例に接してほしいと思います。

 
 
静止画でわからなくても
画像を流せばわかることもある

 
20151108_vol.2_p4_図1

 初学者のドクターの読影を見ていると、残渣や気泡をびらんや潰瘍と捉えてしまう、びらんや潰瘍を残渣として見誤ってしまう、何度も撮影したひとつの病変を複数の病変と診断してしまう、といったことがしばしば見られます。腸管内には残渣や気泡があって診断を難しくする例もあります。このような場合には、画像を前後に送ると、残渣や気泡は移動することが確認でき、病変は常に同じ場所に認識できます(図1)。病変の数を把握する時も同じで、画像を前後に送ることで、同一の病変なのか、複数の病変なのか、正確に把握できます。2画面や4画面の表示で読影を行うことが多いのですが、画像の前後関係を確認する際には、1画面表示で画像を前後に動かすことで、腸管内のカプセル内視鏡の前後の動きもイメージし易くなり、より正確な診断に繋がるものと考えています。

 
 
読影のスペシャリストを増やすために
 

 患者さんが悩んでいる病変を見つけたときは達成感があります。もともと、小腸という臓器は診断が難しく、患者さんも問題を抱えているからこそ検査のために来院されるわけです。その原因を見つけることができれば、患者さんも次のステップに進めますから、とても喜ばしいことだと思っています。このためにも、しっかりと読影力を身につける必要があります。
 読影力を高めるためには、好奇心を持って様々な症例を丁寧に読んでいくことが大事です。このような気持ちを持った若いドクターがカプセル内視鏡の読影に多く携わってくれたらと願っています。
 当院では、消化管を専門にする若手ドクターにカプセル内視鏡の一次読影を担当してもらったり、新しい取り組みとして、産休中の医師に当院と自宅間でネットワークを構築して、一次読影をサポートしてもらう試みも始めました。少しでもカプセル内視鏡に触れる機会が増えて、読影医の増加や育成に繋がればと考えています。

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