心臓外科医としての経験を訪問診療に活かす

　埼玉県草加市。かつて日光街道の宿場町として賑わった、街道文化が残るこの町に「ゆずな内科在宅クリニック」はある。開院は２０２２年３月。外来診療のほか、在宅医療で地域医療に貢献する同院は、草加市・八潮市を中心に県内の川口市、越谷市などのほか、足立区、荒川区などの都内を含む16キロ圏内に住む患者を対象に訪問診療している。同院院長の吉武勇医師は大学を卒業後、長きにわたり、心臓外科医として大学病院等で勤務した経験を持つ。

　「急性心筋梗塞や急性大動脈解離、末期心不全など、懸命に手を尽くしても失う命があると痛感していました。医師としてのセカンドステージは訪問診療を通じて、患者さまの心に寄り添い、地域の医療に貢献したいと思いました」と話す吉武院長。心臓外科医として、集中治療室で培った診断や管理の技術が自身の強みだという。

• 清潔感溢れる待合室

体が改善するイメージを持ち安心感を抱いてもらいたい

　「診療時は目と表情を見て、症状を確認しています。治療が体に及ぼすメリットと同時に、伴う弊害、煩わしさも説明し、それを選ばないという利点も説明しています。積極的治療を望まない方には症状が緩和されるような治療を中心にいくつかの選択肢を提示しています。体が改善する青写真を描いてもらい、患者さまに安心感を抱いてもらいたいのです」

　常に容態をしっかり把握、管理しながら、人生の終焉まで患者の心に寄り添おうとする姿勢は看取りの多さにも見て取れる。

　「私どもは終末期の急変にもしっかり対応し、最期まで患者さまの思いを尊重したいと考えており、去年は70人ほどの終末期患者をご自宅でお看取りしました。感謝のお言葉を頂くことで、我々の思いが形になったと実感しております」