投稿日: 2024年3月23日 20:00 | 更新:2024年5月16日11:45
変形性股関節症について
股関節が変形し、痛みや歩行障害などが生じる疾患。症状だけでなく、患者のライフスタイル・事情も考慮しながら、治療方針を決定します。
疾患の特徴
原因の8割は寛骨臼形成不全によるもの
股関節は体重を支える荷重関節で、体重を支える面積が狭いため、軟骨がすり減り、変形性関節症の発症が多い部位です。40歳~50歳以上の女性に好発しますが、その他の年齢でも少なくありません。
日本人の場合、変形性股関節症の原因の8割は骨盤側の寛骨臼が浅い人(寛骨臼形成不全)によるものです。成人男性の0~2%、成人女性の2~7%が寛骨臼形成不全だといわれています。
また乳児期の先天性股関節脱臼の既往のある方は寛骨臼形成不全になりやすく、成人後に二次的に変形性股関節症が発症するケースも少なくありません。
寛骨臼形成不全の場合、股関節にかかる荷重が正常な場合の数倍に達し、それだけ軟骨に負担がかかり、日常生活動作が傷害されます。
主な症状は痛みと動作障害です。進行具合によって病期は4段階に分かれます。
「前股関節症」では寛骨臼形成不全はありますが、軟骨は保たれている状態、「初期」になると軟骨の厚さを示す関節裂隙が狭くなり、「進行期」は軟骨が一部消失、「末期」には広範囲に消失します。こうなると骨同士がぶつかり、痛みが強くなります。
診察ではX線を撮って変形性股関節症の診断をします。骨の状態の詳細を確認するために、CTやMRIなどの画像診断を行って診断を確定させる場合もあります。
主な治療法
痛みと程度と病期(進行具合)に応じて治療法を検討
治療は痛みの程度と病期(進行具合)に応じて治療法を検討します。痛みが軽度な場合は消炎鎮痛剤などによって痛みを抑える薬物療法、筋力増強を目指す運動療法、関節への負荷を軽減させる食事療法(減量)などを行います。
保存療法で改善が見られない場合は手術を選びます。軟骨の摩耗が少ない「前・初期」で若年であれば、骨切り術に代表される関節温存術が選択されます。関節温存が難しい変形が進んでいる場合はインプラント(人工関節)を使う人工関節置換術を行います。
骨切り術は骨の一部を切り、関節への負荷のかかり方を整える手術です。50歳以下の比較的若い世代を中心に行います。骨の癒合に時間はかかりますが、リハビリ後は活動制限なく生活できます。
代表的なのが骨盤側の寛骨臼を切って大腿骨頭を覆う位置に回転させ、体重を受ける面積を広げる寛骨臼移動術・寛骨臼回転骨切り術です。他にも術式があり、股関節の前方から10cm前後の切開で実施できる低侵襲なCPO、さらに低侵襲なSPOを行っている施設もあります。
人工関節置換術は金属、セラミックス、プラスチックなどで作られた人工関節に、病変部の関節を置き換えます。人工股関節全置換術(THA)は大腿骨頭と寛骨臼の両方を人工関節に置き換えるもの。大腿骨頭だけを置き換える、人工骨頭置換術(BHA)もあります。
近年、THAでも最小侵襲手術(MIS)が実施されています。10cmの切開ですから、体への負担も少ないのですが、術野が狭いこともあり、高度な技術が求められます。
人工関節置換術の大きなメリットは入院やリハビリの期間も短くて済むことです。人工関節の耐用年数に限りがあることから、高齢者を中心に手術が行われてきました。ただ、近年、耐用年数が20年以上へと伸びたため、より若い世代でも実施されるようになりました。
手術を選択する際は日常生活や趣味などのライフスタイル、希望する入院・リハビリテーション期間といった、患者さんの事情も考慮に入れています。
早期発見・治療のために
1. 最初の症状は歩き始めたときに脚の付け根の部分に鈍い痛みを感じることです。
2. 歩いているうちにラクになりますが、長距離を歩くと、また痛くなります。「じっとしていると股関節の置き場がなくなる」と表現する人も多い。
3. 進行すると可動域制限が始まり、足のつめを切ったり、靴下を履いたりすることが難しくなります。若い人が早めに関節温存手術を受ければ、長期間、自分の関節で生活できます。鈍い痛みを感じた時点で受診をお勧めします。早めの手術がキーポイントです。
※『名医のいる病院2023』(2023年1月発行)から転載
痛みについて
立ち上がりや歩きはじめに足の付け根に痛みを感じたら、それがサイン。「変形性股関節症」について、症状、原因、治療法、リハビリテーションなどをまとめました。
※『名医のいる病院2024整形外科編』(2023年10月発行)から転載
変形性股関節症の名医について
名医インタビュー
股関節疾患領域のトップランナーが、これまでの実績、最新の治療法や研究などを語っています。
名医リスト
股関節疾患領域で活躍し、「名医」として評判の高い医師について徹底独自調査を実施。その結果をもとに全国の股関節疾患の名医78人をリストにてまとめ、noteにて電子コンテンツとして販売中です。慢性的な股関節の痛みがあり医師や病院探しに困っている方、変形性股関節症などのひざ疾患を患い現在の医師の治療法に疑問を感じている方、いざというときの備えとして確認しておきたい方などにご利用いただき「不安の解消」の一助にければ幸いです。
変形性股関節症の医療機関について
疾患センター
疾患センターでは、ある特定の病気医療技術に特化した治療を行っており、人工関節センターでは、加齢などが原因で股関節や膝関節が損傷している場合に、手術でインプラントに置き換え、術後はリハビリで療法を施し、関節の機能回復、QOLの改善を目指します。
治療実績ランキング
全国の医療機関4,424病院への独自のアンケート調査(1年間の手術・治療実績)に基づく変形性股関節症の全国・地方別の治療実績ランキングです。名医リストと同様に病院選び・医師選びにご利用いただき「不安の解消」の一助にければ幸いです。
注目医療機関
変形性股関節症に注力している医療機関へのインタビューです。
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