投稿日: 2024年4月23日 17:00 | 更新:2024年5月16日11:44
脳梗塞について
脳の血管が詰まって血流が途絶え、脳細胞が壊死する疾患です。最悪の場合、死に至ります。危険因子は高血圧、糖尿病、脂質異常症などがあり、早期に発見、治療することが命をとりとめる鍵になります。脳梗塞を疑う症状が現れたら、速やかに医療機関を受診する必要があります。
疾患の特徴
発症を「FAST」でセルフチェックする
脳梗塞は脳出血、くも膜下出血と並び、脳が障害を受ける脳卒中の1つです。脳の血管が破れる他の2疾患と違い、動脈の閉塞で発症します。血栓や、動脈硬化で生じた沈着物が血管を詰まらせます。
脳梗塞は血管の閉塞部位や、血栓の発生個所により分類できます。ラクナ梗塞は脳の奥深くに酸素や栄養を届ける穿通枝という極細の血管の先が詰まり、発症します。高齢者や高血圧の人に多く見られます。
アテローム血栓性脳梗塞は脳内の太い血管や頸動脈の病変が原因で起こります。動脈硬化の危険因子である高血圧、高脂血症、糖尿病などを持つ中高年が発症する傾向があります。
心原性脳塞栓症は、心臓でできた血栓が頸動脈や椎骨動脈に流入して脳に到達。太い血管を閉塞させ、意識障害など重篤な神経症状を引き起こし、死に至ることもあります。不整脈や心臓弁膜症などの心疾患を持つ人が発症しやすい傾向にあります。
発症をセルフチェックするには、典型的な3つの症状の頭文字と時間(Time)を組み合わせた「FAST」に着目してください。
Face(顔)は顔のゆがみの有無を確認します。笑顔の時に片側の口角が下がっていたら要注意です。Arm(腕)は片腕の麻痺を見ます。両腕を胸の高さに伸ばし、手のひらを上にして床と水平にした時、片腕が下がれば麻痺の兆候かもしれません。Speech(発話)は即座に言葉が出ているか、呂律が回っているかをチェックします。Time(時間)はこれらの症候を認めた時間を確認します。
主な治療法
血流を早く回復して、脳の損傷を少なくする
脳梗塞を発症後、医師が患者の状態の経過をみて、身体を診察し、診断します。例えば左脚が筋力低下、または麻痺している場合、左脚の運動を司る、脳の右側の領域に血液を送る動脈の閉塞を考えます。
検査ではまずMRIやCT撮影で脳梗塞のタイプを調べます。MRA(磁気共鳴血管撮影)やCT血管造影で脳の血管の状態を見て、脳動脈の狭窄の程度などを精査。さらにMRIやCTの灌流画像検査で脳の循環代謝状態を測定し、必要に応じて脳血管造影検査で脳動脈の右側部位や側副血行などの詳しい所見を調べます。
現在、最も効果的な急性期治療の一つが、静注血栓溶解療法です。これは点滴で静脈内に投与したrt-PAという薬剤が脳動脈内の病的な血栓の成分を変化させて溶解し、血流を再開させる治療法です。
より効果的な急性期治療が、機械的血栓回収療法です。静注血栓溶解療法に続けて行われることも多く、条件が合えば発症後24時間以内まで治療開始が可能です。細いカテーテルを通して脳動脈に治療機器を挿入して血栓をからめ取る、または吸引して血流を再開させる治療法です。とくに内頸動脈や中大脳動脈水平部という太い動脈の閉塞は、静注血栓溶解療法のみでは再開通しにくく、機械的血栓回収療法による治療効果が高いです。わが国での臨床試験の結果などから、広範な脳梗塞にもこの治療がある程度積極的に行われるようになってきました。血栓の生成を防ぐ抗血栓薬(抗血小板薬と抗凝固薬)も重要な脳梗塞治療薬で、急性期から長期慢性期まで用います。動脈硬化が原因の場合、アスピリン、クロピドグレルなどの抗血小板薬を投与します。心房細動などの不整脈や心疾患が原因の場合は、直接作用型経口抗凝固薬やワルファリンなどの抗凝固薬を早期に投与して、再発を防ぎます。
予後はリハビリテーションを早く始めれば、改善します。治療直後ならばベッドの上で始め、なるべく早期に全身を動かして本格始動します。目的は運動機能の回復にとどまらず、患者の心理面を穏やかにして、一日も早い社会復帰を実現することです。
治療法の種類
発症早期
脳梗塞の発症直後の数時間以内に適切な治療が行われることが重要。rt-PA静注療法(4.5時間以内)と呼ばれる血栓溶解薬rt-PAを使用する治療や、カテーテルを利用して血栓を直接除去する血栓回収療法(最長24時間以内)が実施される。
再発予防
再発を防ぐために重要なのは、血栓ができにくくする抗血小板薬や抗凝固薬の内服療法。これらの治療が行われることで、脳梗塞の再発リスクを低減することが期待される。
リハビリテーション
脳梗塞による後遺症は、運動能力、言語機能、認知機能などに影響を与えることがある。後遺症を改善するために、運動療法や言語療法などを実施。患者の日常生活における機能の回復や向上が期待される。
医療機関選びのポイント
POINT1 脳卒中ケアユニット(SCU)の設置
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の急性期患者を対象とする専用病棟であり、専門医療スタッフがチームを編成して診療を行います。この病棟では、脳卒中の早期発見・治療、そして早期リハビリテーションが可能であり、これにより患者の回復が促進されます。
POINT2 静注血栓溶解療法と機械的血栓回収療法
静注血栓溶解療法(rt-PA静注療法)は、脳梗塞発症後4.5時間以内の患者が対象です。機械的血栓回収療法は、とくに脳梗塞発症後6時間以内の患者に治療効果が高く、条件が合えば発症後24時間以内まで治療開始が可能です。どちらの治療も閉塞した脳動脈の病的血栓を取り除くことにより、脳梗塞の症状を改善し、後遺症を軽減できます。
POINT3 一次脳卒中センター(PSC)および一次脳卒中センター(PSC)コア施設
日本脳卒中学会によって認定される施設。一次脳卒中センターは、脳卒中急性期の患者を24時間365日受け入れ、脳卒中専門医が常勤し、静注血栓溶解療法が実施可能です。一次脳卒中センターコア施設は、一次脳卒中センターの認定要件に加え、機械的血栓回収療法が24時間365日対応可能な施設です。
※『名医のいる病院2024』(2023年12月発行)から転載
脳梗塞の名医について
名医リスト
脳梗塞治療で活躍し、「名医」として評判の高い医師について徹底独自調査を実施。その結果をもとに全国の脳疾患の名医100人をリストにてまとめました。脳梗塞を患い現在の医師の治療法に疑問を感じている方、いざというときの備えとして確認しておきたい方などにご利用いただき「不安の解消」の一助にければ幸いです。
脳梗塞治療の医療機関について
脳卒中センター
発症から治療開始までが重要な脳卒中治療。脳神経内科と脳神経外科の連携はもとより、看護師らコメディカルが連動し、チーム医療を実現している。超急性期からリハビリテーションまで患者をサポート。
治療実績ランキング
全国の医療機関4,424病院への独自のアンケート調査(1年間の手術・治療実績)に基づく脳梗塞の全国・地方別の治療実績ランキングです。名医リストと同様に病院選び・医師選びにご利用いただき「不安の解消」の一助にければ幸いです。
注目医療機関
脳梗塞治療に注力している医療機関へのインタビューです。