投稿日: 2024年5月9日 18:00 | 更新:2024年5月16日11:41
狭心症(虚血性心疾患)について
心臓に血液を送る冠動脈が狭くなり、心筋に十分な血液や酸素が届かなくなる状態です。運動中やストレスを強く感じた時、左腕や背中に痛みや圧迫感が生じます。前触れもなく発症し、命を落とすケースもあります。
疾患の特徴
心臓が一次的に酸素不足になる心疾患
心臓は全身に血液を送る重要な器官です。1日24時間、10万回ほど収縮し、ポンプの役割を担っています。この拍動に必要な酸素と栄養は、心臓の表面を走る冠動脈という血管を通り、心筋に運ばれます。
虚血性心疾患は心筋梗塞や狭心症を合わせた総称です。虚血とは血がないことを意味します。文字通り、虚血性心疾患は心臓に血液が十分に行き届かなくなる病状です。心臓に栄養を与える冠動脈が動脈硬化などで狭くなり、血流が悪化。心筋は必要な血液が足りず、胸部が痛み始めます。これが狭心症です。突然、胸が締め付けられるように重苦しくなり、圧迫感のある痛みが特徴です。
動脈硬化は血管が硬くなり、弾力性が失われた状態です。これは血管の内壁にコレステロールの塊であるプラークができるからです。プラークに何かの拍子で亀裂が入ると、かさぶたのような血の塊、血栓で覆われます。この血栓が冠動脈を完全に塞ぐと心筋が壊死します。これが心筋梗塞です。重圧感を伴い、胸が締め付けられるように激しく痛み始めます。発作は15分以上続き、数時間続くこともあります。
検査・診断は心電図検査で虚血の有無を調べます。超音波検査のほか微量の放射性物質を注射して心臓への血流を確認する心筋シンチグラフィーなどの画像診断をします。MRI検査で心筋の動きや状態を観察することがあります。CT検査で冠動脈の狭窄を直接目視、壊死した心筋の成分の有無を調べるため、血液検査をします。
主な治療法
薬物療法、カテーテル治療、手術から選択
治療は血管の狭窄部を広げ、血流を回復するのが目的です。
主に薬物治療・経皮的冠動脈インターベンション(PCI)・冠動脈バイパス手術(CABG)の3つがあります。
薬物療法は血管の緊張を可能な限り緩めて、心臓の負担を抑え、血液凝固を防ぐのが目的です。硝酸薬は血管を拡張して発作を鎮めます。硝酸薬のニトログリセリンを服用すると、狭心症の発作は1分半~3分ほどで軽減し、効果が約30分間続きます。
経皮的冠動脈形成術(PCI)は手首や腕、足の付け根などから挿入したカテーテルを冠動脈の狭窄部分まで進めます。あらかじめカテーテルの先端につけてある風船を膨らませ、血管を広げます。次に、血管の拡張を確実に維持するために、ステントと呼ばれる金属の筒を留置して血流を確保します。
カテーテル治療は低侵襲かつ、入院期間が短いのが利点です。外科手術と違い、皮膚、骨、神経など、周辺の組織を損傷しません。治療後の傷口の痛み、しびれ、運動障害などの合併症を極力減らせます。
狭窄箇所が多い、重度の狭心症には「冠動脈バイパス術」を検討します。狭くなった冠動脈の先に新たに血管(バイパス)をつなぎ、狭窄部を迂回して血流を確保するものです。
心臓を手術する時、心臓は人工心臓を使い、一時的に止めなくてはなりません。しかし、オフポンプバイパス手術は人工心肺装置を用いず、心臓の動きを止めない手術です。1990年代に登場後、急速に広まった手術方法です。現在わが国では、冠動脈バイパス手術のおよそ3分の2がオフポンプ手術だといわれています。心臓外科医の手術手技の開発や進歩、その習熟度の向上のみならず、手術周辺機器の進化が普及に大きく寄与しています。
従来の手術と比較すると、心臓を動かしたままなので、患者さんの体にかかる負担は少なくてすみます。一方、拍動したままの心臓を治療するため、病状によっては不向きなこともあります。執刀医にも非常に高度な技術が求められます。
また、有用な循環器治療として挙げたいのがエキシマレーザー治療です。通常のバルーン治療が困難な複雑病変に対する効果が報告されています。
治療法の種類
手術
◎冠動脈バイパス術
薬物療法
◎血管拡張薬
◎β遮断薬
経皮的冠動脈形成(PCI)
①血管にバルーンカテーテルを挿入
②バルーンを膨らませてステントを補強
③ステントの留置により血管の拡張を維持
エキシマレーザー治療
医療機関選びのポイント
POINT1 治療実績に着目
治療実績の多寡に着目するのも一考です。治療実績が豊富な医療機関では、経験と知見が蓄積されています。それに比例して治療水準も高いと考えられます。
POINT2 心血管カテーテル治療専門医の在籍
日本心血管インターベンション治療学会が認定する心血管カテーテル治療専門医の在籍を確認するのも有効です。在籍人数は多い方が好ましいでしょう。
POINT3 PCI、CABGの治療件数をチェック
治療の要になる経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、冠動脈バイパス術(CABG)の件数は要チェックです。特にオフポンプバイパス手術が可ならば、高度な執刀技術を有するといえるでしょう。
※『名医のいる病院2024』(2023年12月発行)から転載
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治療実績ランキング
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