投稿日: 2024年6月20日 12:00 | 更新:2024年6月20日10:00
2021年5月23日
ひだまりホームクリニック 和田忠志
(全国在宅療養支援医協会 元監事)
ひだまりホームクリニック 和田忠志
(全国在宅療養支援医協会 元監事)
はじめに
前回、17年前にこの原稿を書いた頃には、多くの方から、「在宅医療を行う医師(以下「在宅医」と略します)を見つけることが困難」と聞いていました。しかし、時代は変わり、特に、都市部では、在宅医を見つけることはそれほど困難ではありません。しかし、なお、日本の場所によっては、在宅医を見つけることが困難なことがあるようです。そこで、本稿では、「どのようにすれば在宅医を見つけることができるか」を書いてみたいと思います。
1. 地域性
概して、東京都二十三区、大阪市、京都市、名古屋市、仙台市などの大都市では、在宅医が確実に見つかる傾向があります。都市近郊や地方都市では、在宅医を見つけることが困難なことが多い傾向があります。しかし、「若い開業医」は増えており、そういう先生は在宅医療をしてくれる方が比較的多いといえます。また、全国各地に、「在宅医療を主に行う診療所」も次第に増えています。諦めずに、ぜひ、探してみてください。
2. 在宅医療の特性
在宅医療は、医療機関と患者様の自宅が近ければ近いほど医療水準が高いと考えて差し支えないと思います。大まかに、患者さんの自宅から自動車で30分以内で到着できる医療機関を探すのが理想です。自動車で1時間程度かかる医療機関でも、訪問診療は可能なことがありますが、具合が悪いときに、医師が簡単に自宅に訪問できないということがあります。
(医師が定期的に患者さんの家を訪問するとき(定期往診)、厚生労働省の言葉で、それを「訪問診療」と呼んでいます。また、医師が緊急あるいは臨時に患者さんの家を訪問するとき(臨時往診)、厚生労働省の言葉で、それを単に「往診」と呼んでいます。)
3. 在宅医を探す
1)患者さんが入院しているとき
1. 病院の医療連携室・相談室(医療ソーシャルワーカー)に行く
多くの方は、脳梗塞やがんなどの重い病気で病院に入院し、その後、継続的な自宅療養を希望し、在宅医を探されることが多いと思います。そういう場合の相談窓口を記載してみます。退院してから、在宅医を探すのでは、やや遅いと思います。退院する前に、できる限り早く、相談を始めたいと思います。
もし、あなた(入院している方)が、入院前に、「かかりつけ医」を持っていた場合、まず、第一にその先生に相談してみることです。本人が相談に行けない場合、家族がその「かかりつけ医」に相談に行っても構いません。あるいは、電話で相談してもよいでしょう。まずは、ご自分の「かかりつけ医」に相談することが大切です。
あなたが入院中の場合、かかりつけ医を持ってない方は、まずは病院で探し始めましょう。
病院には、たいてい、「医療連携室」「相談室」という部屋があります。まずは、そこを訪れることをお勧めします。このような窓口には、通常、「医療ソーシャルワーカー」という専門職が、患者さん、ご家族の相談に応じています。「医療ソーシャルワーカー」は、医療の連携や、医療制度活用の専門家です。在宅医療を行う医師を、みつけたり、紹介したりすることも、「医療ソーシャルワーカー」の大切な仕事です。ぜひ相談してみてください。
2. 地域で探す
退院前に、あなた(入院している方)の自宅の近辺で、在宅医を探し始める方法もあります。 例えば、次のような相談窓口があります。
* 地域の医師会
* 市役所の介護保険担当窓口
* 居宅介護支援事業者(ケアマネジャー)
* 訪問看護ステーション
* 地域包括支援センター
これらの窓口を訪れ、自宅近隣に在宅医療を行う医師がいるかどうかを聞くことができます。特にあなたが過疎地に住んでいる場合、最寄りの医師会に相談するのが有利です。
また、居宅介護支援事業者、訪問看護ステーション、地域包括支援センターなどは、市町村等で配布している「医療・福祉機関リスト」などに必ず掲載されています。特に、訪問看護ステーションは、在宅医の指示のもとに、様々な患者さんを看護している事業所ですので、「あなたの病状にあった適切な在宅医」を紹介してくれる可能性が高いと思います。
3. インターネットなどで探す
上記のように、病院の窓口や、地域の窓口で探して、在宅医を見つける方法がもっとも有効な方法です。しかし、下のようなホームページにアクセスして在宅医を探す方法もあります。
(ホームページなどで探す場合、どうしても、その医療機関に対する真実の情報が分かりにくいということがあります。ホームページで探し当てた医療機関には、必ず事前に相談に訪れることをお勧めします。)
4. 書籍
次のような書籍も出ています。
*「在宅ケアをしてくれるお医者さんが分かる本」 全国版―在宅ケア医年鑑〈2008年版〉和田 努 (著) 同友館
2)かかりつけ医・病院に患者さんが通っているとき
患者さんが、今、開業医院や、病院に通院しているが、次第に障害が重くなり、通院が困難となったとき、在宅医療を求めるという方法があります。
1. 開業医院に通院しているとき
実は、開業医の先生で、外来ばかりでなく、在宅医療を行う医師はかなり多いことが分かっています。 まず、「あなたの先生に相談する」ことをお勧めします。その先生が、通院困難な患者さんに対して、定期的な往診を行ってくれることがあります。とりわけ、もし、あなたが、その先生に10年とか20年の長期にわたってかかっているなら、ぜひ、その先生に続けてかかりたいと思うでしょう。ぜひ、その先生が訪問診療をしてくれるかどうかを訪ねるとよいと思います。
2. 病院に通院しているとき
やはり、「まずは主治医に相談する」ことをお勧めします。中小病院の先生、特に、過疎地の中小病院の先生の場合には、在宅医療を実践していることも多いのです。あなたが、比較的過疎地にお住まいで、普段から病院にかかっている場合は、ぜひ、その先生に相談してみることをお勧めします。
しかし、病院の主治医の先生と話しても、在宅医療は困難ということも多いでしょう。その場合、次に、上に述べた、病院の相談室や医療連携室の扉をたたくことをお勧めします。
4. 在宅医に相談するときの方法
上記のような方法で、在宅医療を行ってくれそうな先生が見つかった場合、「では、どうするか」、を書いてみたいと思います。
1. 家族だけでも足を運ぶ
「まず、その先生のところに足を運ぶのがよい」と断言します。「行って相談」してみなければ、具体的な診療内容が分からない場合があります。
2. 紹介状はあるほうがよい
あなたが別の医療機関にかかっている場合、相談時に、「紹介状」を持っていくほうが圧倒的に有利です。「紹介状」というのは、現在の主治医が、今後の医師に書く手紙のことです。
病院入院中や、通院中の場合、ぜひ、今診てもらっている先生に紹介状を書いてもらい、相談時にもって行きたいと思います。
すでに述べてきたように、在宅医療を行ってくれそうな先生が見つかった場合、退院を待たずに相談に行くほうが有利です。ご家族だけが相談に行っても構いません。
もしかすると、患者さんの病気が特殊な病気の場合、その先生は在宅医療でその方を診療することが困難かもしれません。すると、別の先生を探さなくてはならないかもしれません。仮に、その先生が在宅医療を引き受けてくれる場合でも、「退院までに準備するもの、準備すること」などを、その先生から事前に教えてもらえることも多いのです。
その意味でも、ぜひ、可能な限り、退院前に相談に行かれることをお勧めします。
5. 病院連携
1. 現在の病院の通院を必ずしもやめる必要はない
「共同診療」という考え方があります。
現在通院中の病院があり、それとは別の医療機関(たいていは、診療所・クリニック)に在宅医を見つけたとき、病院の通院をやめる必要はありません。
例えば、三ヶ月あるいは半年に一回ずつ病院にかかりながら、それと並行して、月に1〜2回の在宅医療を受けることもできます。また、在宅医にかかっていて、入院が必要なときには、もとかかっていた病院に入院することもできます。
2. くすりは在宅医に処方してもらうのがよい
このように、在宅医療をうけながら病院への通院・専門医受診などを並行して行うとき、薬は、在宅医に処方してもらうほうが有利です。というのは、一般に、在宅医のほうが患者さんを頻回にみるので、患者さんの細かい状態変化が分かるのです。そして、患者さんの立場から言うと、細かい病状変化を知っている医師に、状況に応じて薬を処方してもらうほうがきめ細かな治療ができるのです。
めったにいかない病院から薬をもらい続ける方がいますが、あまり得策ではないことが多いです。在宅医に、一括して薬を出してもらうようにしたほうが有利なことが多いといえます。
おわりに
以上、在宅医を探し、そして、かかり始めるときは、どうすればよいか、お話してきました。在宅医療はここ20年で広く普及し、多くの地域で在宅医療を行う医師が出てきました。一方で、日本には、特に過疎地や離島において、在宅医療を受けることができない場所もあります。どうしても、在宅医を見つけることができない場合には、全国在宅療養支援医協会に相談することも可能です。読者の方が安心して在宅療養できるようにお手伝いしたいと思っています。
【関連情報】