【名医からのメッセージ~トップランナーが語る半生】003 大野 真司(乳腺外科医)第5回

【名医からのメッセージ~トップランナーが語る半生】003 大野 真司(乳腺外科医)第1回

各領域のプロフェッショナルである「名医」へ、その生い立ち、医師になったきっかけ、実績、そして未来へのメッセージをインタビュー。 
 
一般生活者へ最新医療を啓蒙、医師へのメンタルブロック解消により病院や医師選びの選択肢の拡大を実現し、個々にとっての最適な医療の受診につなげることを目的にしています。
3人目は乳がん治療におけるプロフェッショナル 大野真司先生(相良病院 院長)です。
7回にわたるシリーズの5回目は「私の現在位置と未来について(前編)」になります。

第5回:相良病院での日々
乳がん治療トップレベルの医療機関の普及
—相良病院に移られます。
私は九州出身であり、家族も福岡に住んでいます。そのため、定年を迎えたら九州に戻ることを前提に働いていました。九州大学関連の病院で働くことも検討していましたが、乳がん医療に特化した病院で働きたいという強い思いもあり、全国でも屈指の乳がん治療専門病院である相良病院が最適な選択肢だと確信しました。
また、相良病院には私が知っている医師が多く在籍しており、特に現在の院長補佐である相良安昭先生は、九州がんセンター時代の教え子でもあります。
このような人間関係もあり、相良病院での勤務を決断することが自然な流れでした。また、相良病院の乳がん医療の先進性に魅了され、その一員として貢献したいという強い思いもありました。
博愛会相良病院
博愛会相良病院
—相良病院の乳がん医療について、特に優れている点を教えてください。
相良病院は治療だけでなく、患者さんの心のケアやチーム医療に重点を置いている点が非常に優れています。これにより、患者さんが安心して治療を受けられる環境が整っていることが、相良病院の大きな魅力です。患者さんにとって最良の治療を提供するための体制がしっかりと整っていることを実感しています。
—相良病院ではどのようなことに注力していますか。
相良病院では、医療も治療も非常に高いレベルで一流の取り組みをしていますが、相良病院の優れた医療について知らない人が多いのが現状で、この素晴らしい医療を世の中に伝え、情報発信することが私の役割だと感じています。これは、以前勤務していたがん研有明病院で行っていたことと同じです。情報を広く発信することで、より多くの人に相良病院の医療の素晴らしさを知ってもらい、患者さんに最良の治療を提供できるよう努めたいと思っています。
相良病院では、がん研有明病院当時ほどマネジメントをやる必要はない状況なので注力はしていません。手術の助手で入ったり、外来は週2,3回出ていたり、人が足りないところのサポートをしています。
—相良病院における乳がんの治療実績について教えてください。
相良病院には、遠方からも多くの患者さんが来院されています。具体的には、宮崎、熊本、沖縄からの患者さんもおられますし、鹿児島やその離島を含めて多くの方々が来られています。実際、鹿児島の乳がん患者さんの約7割以上が相良病院で治療を受けています。
昨年は、相良病院で868例の乳がん手術を行いました。この手術数は、全国的に見ても非常に多く、全国で屈指の手術数を誇っています。
EBMとコミュニケーションの重要性
—患者さんの診察や治療にあたり、大切にしていることを教えてください。
外科医として、最も重要なのは技量と技術です。手術においては、その適応とタイミングを見極め、その上で手術を上手に行うことが不可欠です。以前、消化器外科の手術で合併症を起こしてしまったことがあり、その経験からも、技術の向上と慎重な判断が求められると痛感しました。
内科的治療、特に投薬においては、科学的根拠、いわゆるエビデンスが重要です。臨床試験の結果や患者さんの状況を総合的に考慮する必要があります。そして、最も大切なのは、患者さんがどのようになりたいのか、患者さんの思い、プレファランスを理解することです。
医師としての力量は、これらの要素を統合し、個々の患者にとって最善の医療を提供することにあります。そして、その根底には患者さんの思いを引き出せるコミュニケーション力があります。
EBM(エビデンス・ベースド・メディスン)とコミュニケーション力、この二つを非常に大事にしています。患者さんとの対話を通じて、最も適切な治療法を見つけ出し、実践することが私の使命だと考えています。
—6回目は「私の現在位置と未来について(後編)」になります。
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