【名医からのメッセージ~トップランナーが語る半生】003 大野 真司(乳腺外科医)第6回

【名医からのメッセージ~トップランナーが語る半生】003 大野 真司(乳腺外科医)第1回

各領域のプロフェッショナルである「名医」へ、その生い立ち、医師になったきっかけ、実績、そして未来へのメッセージをインタビュー。 
 
一般生活者へ最新医療を啓蒙、医師へのメンタルブロック解消により病院や医師選びの選択肢の拡大を実現し、個々にとっての最適な医療の受診につなげることを目的にしています。
3人目は乳がん治療におけるプロフェッショナル 大野真司先生(相良病院 院長)です。
7回にわたるシリーズの6回目は「私の現在位置と未来について(後編)」になります。

第6回:若手の教育と乳がん早期発見の啓蒙
若手医師の情報発信をサポート
—その他、注力していることをお聞かせください。
若い医師たちに発信のチャンスを与え、そのサポートを行うことです。例えば、オンライン講演会がある場合には、若い医師たちに積極的に演者として参加してもらっています。その際、私との打ち合わせを行い、講演会の目的について話し合います。
私は常に、講演会の目的は「あなたを売り出すこと」だと伝えています。このアプローチにより、講演の内容がエビデンス中心から聞き手にとってより面白く、魅力的なものに変わります。その結果、講演が好評となり、次の講演にも呼ばれるようになります。こうして、若い医師たちが自らのキャリアを築いていけるよう、好循環を作り出すサポートをしています。
若手医師の成長と活躍を支援することで、医療全体の質を向上させることを目指しています。彼らが新しい知識や技術を取り入れ、積極的に発信していくことで、乳がん医療の発展にも大きく貢献できると確信しています。
乳がんの早期発見に向けて新たなメッセージ
—ピンクリボン活動について教えてください。
私は、2002年から認定NPO法人ハッピーマンマの代表理事としてピンクリボン活動に参加しています。これまでは乳がんの早期発見と早期治療の重要性を強調してきました。しかし、最近では分子標的薬など新しい治療薬の登場により、治療のアプローチが変わってきています。
ハッピーマンマでのピンクリボン活動2003年
ハッピーマンマでのピンクリボン活動2003年
例えば、乳がん死亡率減少にはマンモグラフィ検診による早期発見と薬物療法の進歩が関わっています。薬物療法では、分子標的薬などの薬は非常に高額であり、術前や術後に使用する場合は、1か月あたり100万円ほどの費用がかかります。
また、乳がんが2年後に見つかった場合、治療やケアにおける負担が大きく変わってきます。病院通いや抗がん剤治療の副作用、家族への負担など、多くの課題が生じます。このような状況を考慮すると、早期発見による生存率向上はもちろんですが、優しい医療や低侵襲な治療の重要性が増してきており、私たちは、そこに焦点を置いて、メッセージを広く伝える取り組みにシフトしています。
そして、乳がん患者さんやその家族がより良い医療を受けられるよう、取り組んでいます。
ソフトバンクホークスとのコラボによるピンクリボン活動
ソフトバンクホークスとのコラボによるピンクリボン活動
pathient and public involment(PPI)をキーワードに
—20年以上臨床研究に携わっていますが、これまでとこれからについて教えてください
私は2000年頃から臨床試験に関わり、2012年から2022年まである臨床試験グループの代表理事を務め、国際的な臨床試験グループの理事もしていました。臨床試験に関わる中で常に考えていることは、現在の患者さんに対して最善の医療を提供する一方で、明日や将来の患者さんのためにも、より良い医療を創っていく必要があるということです。
現在の医療水準が維持されるだけでは、将来の患者さんがより良い医療を受けることはできません。そのため、基礎研究と臨床研究が欠かせません。臨床試験はその中でも極めて重要であり、私はこれまでの20数年間、臨床試験に携わってきました。
未来の患者さんのために、現在の患者さんが犠牲になることは許されませんので、現在の患者さんには最善の医療を提供しつつ、将来に向けても貢献できるよう、臨床研究や臨床試験が不可欠です。その際、患者さんの声を重視し、彼らの意見やニーズを取り入れること(pathient and public involment(PPI))も重要です。これが、今後の臨床研究のキーワードであると考えています。
臨床試験を通じて、より効果的で安全な治療法を見つけ出し、患者さんの生活の質を向上させることに今後も取り組んでいきます。
チャリティー(ミラノ)で故 Angelo Di Leo教授と
臨床試験チャリティー(ミラノ)で故 Angelo Di Leo教授と
—最終回の7回目は「次世代へのメッセージ 次の人へ」になります。
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