投稿日: 2020年2月4日 8:57 | 更新:2020年2月4日8:57
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
QST病院(旧:放射線医学総合研究所病院)
院長 辻 比呂志
千葉県千葉市のQST病院(旧:放射線医学総合研究所病院)は、重粒子線治療を中心とした、放射線医療に特化した医療機関である。同院は放射線の医学利用と被ばく医療の研究拠点として1961年に設立された。以来、先進的な放射線医学の臨床研究を牽引し、1994年には世界で初めて重粒子線治療を導入。2019年6月までに世界最多、1万2000件以上の実績を積み重ね、その発展に大きく貢献している。
重粒子線治療の特長としては、これまでの放射線治療より、ピンポイントで高い線量を患部に集中できる点が挙げられる。線量集中性が高いという特性と、がん細胞を死滅させる効果がX線・陽子線の2~3倍ほど高いという特性から、従来の放射線治療が難しいがんの治療も期待できると辻比呂志院長。「長期間通院することなく治療できる利点もあり、初期の肺がんや肝臓がんの場合、当院では2日間で治療を完了できます」
重粒子線治療の普及を目指し、同院では機器の高性能化・小型化の研究にも力を入れている。その結果、現在では国内6カ所で重粒子線治療が受けられるようになった。「多施設が協力して臨床研究を進めた結果、骨軟部腫瘍、及び前立腺がんと頭頸部がんの一部については保険適用となり、身近な治療法としてより多くの人に利用していただけるようになりました」と辻院長は説明する。普及とともに、重粒子線を患部に照射するための技術も進歩し、細いビームによる高速スキャンや360度任意の角度からの照射などにより、患者は楽な姿勢でより精密かつ高度な重粒子線治療を受けることができるようになったという。
同院の豊富な経験・ノウハウと、それらの進歩があわさり、難治がんの治療成績も向上していると辻院長。「すでに保険適用となった疾患ばかりでなく、X線治療では効果が不十分なすい臓がんや直腸がん再発例などに対しても、高い有効性が示されています。そうした点を知っていただき、選択肢の一つとなれば幸いです」
重粒子線治療を含めた量子科学技術(QST)における臨床研究の主体を担う存在として、2019年に改称、機能強化を遂げた同院。これからも最先端の放射線医療の技術開発を主導し、「がん死ゼロ 健康長寿社会」の実現を目指すという。
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