投稿日: 2017年5月17日 17:21 | 更新:2017年5月18日11:01
一宮西病院
神経内科部長 山口 啓二
やまぐち・けいじ●日本神経学会認定神経内科専門医、日本内科学会認定総合内科専門医、日本脳卒中学会 評議員、日本脳循環代謝学会 評議員ほか。
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血に大別される脳卒中は、要介護状態に至る大きな原因であり、迅速な治療や、その後のリハビリテーションなど、手厚い対応が求められている。愛知県一宮市を中心とした地域で、この脳卒中への治療体制を強化しているのが一宮西病院だ。その背景として、「この地域は人口規模に比べ、脳卒中に適切な対応ができる施設が少なく、十分にカバーしきれない現状にありました」と宮嵜章宏医師が語るようなニーズへの対応があるという。
脳神経外科のみが脳卒中治療を担う施設が一般的には多い中、同院では、脳疾患や神経疾患を内科的に診る神経内科と連携して臨んでいる。「特に脳梗塞ではt-PAの投与に代表される薬物治療など、手術の対象にならないケースが少なくありません。そこを神経内科が担うことで、脳神経外科が手術に専念できるようになるのです」と山口啓二医師。実際、神経内科は手術こそ手がけないが、画像診断や神経学的な診断、薬物治療の経験が豊富だ。それを生かしつつ、病状の変化に応じた内科的治療や、手術後のケアを行っていく。
両科の人員を確保したことにより、脳卒中に対し、24時間365日迅速な対応を実現させている。もともと同院では、開頭手術に加え、近年注目されている脳血管内治療を提供できる医師も揃っている。それに加えて、手術や血管内治療に集中できる体制を生かすことで、脳腫瘍などの予定手術と並行しつつ、緊急の手術や脳血管内治療にも随時対応できるようになったのだ。現在では、救急の患者に対し、最初から脳卒中治療を担当する医師が対応。MRIなどの画像診断も随時行えるため、必要な治療を迅速に選択することを可能にしている。
加えて、脳神経外科では血管内治療の診療体制も拡充してきた。「特に脳梗塞では、かつては十分治療できず手足の麻痺などが残っていた症例も、脳血管内治療の血栓回収療法で後遺症なく助けられるようになってきました。ただ、血栓回収療法を十分に提供できている地域はまだまだ数少ないのです」と宮嵜医師。同院では、日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医が3名在籍する、全国的にも類を見ない体制のもと、他院との連携まで含めた地域全体を包括する脳血管内治療の提供を目指しているという。
急性期の治療だけでなく、在宅復帰を目指すリハビリもまた、力を入れている。同院は地域の中で回復期リハビリテーションを提供してきた病院であり、今も関連病院を含めてセラピストは約300名在籍する。それを生かし、治療当日の超急性期、翌日以降の急性期、その後の回復期、在宅まで円滑にリハビリを進めていく。
そして現在では、機能回復を目指した研究も手がけている。それが、動作を補助するロボットスーツ「HAL」を活用した取り組みだ。「当院で導入した医療用のHALは現在8つの神経難病の治療で保険が適用されており、歩行機能改善が期待できます。脳卒中に用いれば、従来のリハビリにはない機能回復効果が得られ、入院期間の短縮や要介護者を減らせる可能性があるのです」と山口医師。同院ではHALを東海地区で初めて導入し、神経難病の治療に用いるだけでなく、2016年11月から脳卒中に対する臨床試験も開始。後期高齢者が急増し、介護問題が深刻化する2025年問題への対策にもなりうる治療として期待を寄せているという。
脳血管内治療の登場、さらにはHALによる機能回復という、脳卒中治療の進歩を受け、スタッフはますます熱意を持って治療に臨んでいる。これからも高いチーム力で、地域の脳卒中医療を担っていくことだろう。
- Information
- 〒494-0001 愛知県一宮市開明字平1番地
TEL.0586-48-0077
【診療科目】脳神経外科、神経内科、救急科 他
【診療時間】9:00~12:00 ※急患は24時間対応
【休診日】日・祝・土午後
(診療科により異なります。詳しくはHPをご確認ください。)
http://www.anzu.or.jp/ichinomiyanishi/