投稿日: 2021年4月22日 8:00 | 更新:2024年1月9日13:08
東北大学病院 救急科科長
高度救命救急センター部長
【寄稿】
クシモト・シゲキ
久志本 成樹
2019年、救急車は4.7秒に1回出動し、国民の約21人に1人が救急搬送されています。日本の総人口は08年をピークに減少していますが、救急車で搬送される患者さんは増え続けています。
なぜでしょうか。年齢が高くなるとともに救急車を利用することが多くなり、全人口に対する高齢者の方の比率が高くなっていることによります。高齢化する社会として、避けて通ることはできません。
一方、救急車が出動しても、約1割は患者さんを病院に搬送しておらず、病院に搬送されても約1/2の患者さんは帰宅可能です。
では、救急車は呼ばない方がいいのでしょうか? 突然倒れた、大けがをした――緊急を要します。脳卒中や心筋梗塞などの血管が詰まる病気では、症状が軽いようにみえても治療をはじめるまでの時間がとても大切です。すぐに治療をすることで回復が大きく変わります。このようなとき、だれもがすぐに救急治療を受けることができるようでなければなりません。
救急病院でも、治療の更なる充実を目指し、さまざまな取り組みを実施しています。
これまでの集中治療室は一つのフロアに多くの患者さんが入院し、壁などの仕切りはありませんでした。集中治療を行う医師や看護師は使いやすいのですが、患者さんやご家族には居心地の良い空間ではないかもしれません。
そのため、プライバシーを守り、ご家族とともに快適に時間を共有することができるように全室広いスペースの個室を備える医療機関もあります。
世界中の多くの病院の救急診療室では、患者さんの状態の評価と安定化をしてからCT室に移動して検査をし、その結果によって血管撮影室や手術室に移動して治療を行っています。
しかし、重症救急患者さんの治療では“時間”がとても大切です。そのため、CTと血管撮影装置、手術室機能を備えた初療室である“ハイブリッドER”を設置する医療機関もあります。
ハイブリッドERは、重症救急患者さんに対して、初期治療をすると同時に、移動することなく、①CT検査、②止血などのための血管内治療や手術を可能とするものです。
一刻を争う状態の不安定な患者さんに対して、時間をかけて移動してから検査や治療をするのではなく、“ひと”と“もの”を集約して短時間に治療をするためのスペシャルユニットだといえます。
こうした取り組みなどを通じて、救急病院では一人でも多くの患者さんが元気になり、快適な時間を過ごせるように努めています。
東北大学病院 救急科科長 高度救命救急センター部長 | |