5年前の熊本地震で震度７を2回記録後、物忘れの外来受診者数が約2倍に増加し、MCI（軽度認知障害）の症状をきたす患者さんが急増しました。地震後早期にMCIスクリーニング血液検査（株式会社MCBI）での陽性率が上昇。認知症発症に関連するアミロイドβ排泄関連蛋白質に変化がみられたため、検査の開発者である筑波大学准教授内田和彦先生と共同研究を開始し、国際学会AD/PD 2019で発表を行いました。その後、1000名以上の頭部MRI検査VSRAD測定値を解析、地震発生後2年目より海馬体積の減少が確認され、地震後の強いストレスや生活習慣の変化などの影響が考えられます。高齢化に伴う大きなリスクとして生活習慣病の悪化やフレイル、低栄養や薬剤起因に伴うビタミンや亜鉛欠乏症、ホルモン代謝異常などの増加があります。そこで当科では、診断や機能評価にMRIによる脳体積変化や血液検査を活用し、熊本大学大学院薬物治療学分野でのAPOE遺伝子研究にも参加して予防法を追求しています。地震や水害などの災害だけでなく、今後コロナ禍で不安が増すと睡眠にも影響し、日常の運動や社会交流への強い制限が続くと認知症リスクが上昇すると考えられ、東京医科歯科大学特任教授朝田隆先生、今村総合病院納光弘先生、ほか専門家の指導を仰ぎ問題解決とリハビリの推進を行い認知症予防に取り組んでいます。