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独立行政法人国立病院機構

村山医療センター

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最先端のテクノロジーで
脊椎脊髄疾患から患者のQOLを守る

伝統と革新性で低侵襲手術に注力する

 日本はもとより海外からも脊椎脊髄疾患の治療を志す医師が集まる病院がある。1941年に陸軍施設として誕生以来70年にわたって引き継がれる脊髄損傷治療の伝統と、最先端のテクノロジーを併せもつのが村山医療センターだ。一貫して注力し続けるのが低侵襲手術である。

 頸椎の場合、一般的な手術であれば首の後ろを大きく切り開いて筋肉を剥がし、背骨を露出して行うのに対し、同院はピンポイントで最小限の切開に留める低侵襲頚椎除圧術(スキップ・ラミノプラスティ)を行う。顕微鏡を用いるミリ単位以下の緻密な作業だ。

 腰椎固定術は米国のヘインズ医師が開発し、2011年に日本に伝わったCBT法(皮質骨軌道法)を採用する。

 「従来の術式と異なり、より内側からスクリューが入るため、傷を大きく広げる必要がありません。筋肉や神経をできるだけ温存させるので、術中の出血や術後の痛みも少なく、患者さんの社会復帰が早くなります」と日本への導入に尽力した谷戸祥之院長は話す。

 19年、脊髄損傷や脳血管障害の患者が快適にリハビリテーション可能な新病棟が完成、同年度の脊椎脊髄手術数は1207件※を数える。

 またiPS細胞を用いた共同研究も進んでいる。脊髄損傷の亜急性期患者の機能回復を目指し、慶應義塾大学病院でiPS細胞を移植後、同センターに転院して経過観察を行う。

 21年には「村山モデル」と呼ばれる独自の新型コロナウイルスのワクチン接種方法を行い、マスコミの注目を集めた。2組のワクチン接種グループを、医師と看護師が移動しながら注射する。1組目が注射する間、もう1組はワクチン説明ビデオを視聴する効率的な方法だ。

 「珍しい疾患がニュースになったとき『どのような病気だろう?』とネットで検索すると思います。そこでいち早く疾患解説をHPに掲載しています」と谷戸院長は話す。

 時代に合わせたマーケティングにも力を入れつつ、低侵襲に根ざした脊椎脊髄疾患の治療を続けていく。

  • 従来の腰椎固定術(上)とCBT法で行う腰椎固定術(下)

脊椎脊髄疾患のプロフェッショナルが、
側弯症からの解放を目指す

患者に寄り添った側弯症治療

 背骨が左右に10度以上弯曲した状態を「側弯症」といい、本邦でも人口の1~2%に認められる。多くは学校の検診などでみつかり、小中高生の女子に多い。

 「治療を受ける当人とともに、それを支える家族の理解と協力も重要です。誰にでもわかりやすい丁寧な診療を心がけています」と整形外科医長の許斐恒彦医師は話す。

 カーブは進行するものとしないものとがあるが、あらかじめ予測することは難しく、年齢や弯曲の型などを参照しながら治療方針を決定する。カーブが20度以上、かつ成長期の途中であれば装具治療を行い、カーブが40~50度を超えるときは手術を検討する。成長期前であれば、脊椎内固定器具(ロッド)を半年ごとに伸長させるグローイングロッド法が行われる。成長期以降であれば矯正固定手術が適応となる。

 子どもと比べると、体が固く骨も弱くなるため、大人の側弯症は治療が難しくなる。変形が進んで骨が癒合して固まっているときには前方と後方からの3D骨切りを併用した矯正固定手術を検討する。ナビゲーションを用いて正確に骨を切り、角度を調整し矯正する術式だ。

チーム医療でシームレスな連携をはかる

 側弯症の治療は、さまざまな問題に適宜対応していかなければならず、手術も長時間に及ぶ。それらの課題に対し、同センターでは脊椎脊髄疾患に関する深い知識と経験を備えた医師4名を中心とした側弯症治療チームで対応する。

 「互いにフォローし、長時間の手術も集中力を切らさぬようシームレスな連携を心がけています。麻酔担当医師や看護師をはじめ、放射線技師、検査技師、臨床工学技士らコメディカルの協力もかかせません」と許斐医師は話す。村山医療センターではチーム医療の利点を生かし、大人から子どもまでさまざまな脊椎の症例に応える。

病院長

谷戸 祥之

日本整形外科学会認定
整形外科専門医

整形外科医長

許斐 恒彦

医師

大久保 寿樹

医師

古川 満

医師

矢内 嘉英

医療新聞社
編集部記者の目

日本有数の脊椎脊髄疾患治療施設といわれる村山医療センター。今回の取材では背骨がカーブする疾患「側弯症」について話を伺った。大人で重度の側弯症の場合、手術が約8時間に及ぶケースもある。そんなときは許斐(このみ)恒彦医師がリーダーを務める側弯症治療チームが複数の医師でリレーしながら手術を行う。緊密な連携でチーム医療を実践するプロフェッショナル集団だからこそ、なせるわざだ。

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