院内環境を徹底して整え重症患者の治療に取り組む

　大阪府枚方市の住宅地で15年もの間、「先端的な技術を身近に」をコンセプトに、地域の眼科医療に貢献し続けてきたのがこうやま眼科だ。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大は同院を訪れる患者にも大きな影響を与えてしまった。香山政紀理事長は次のように語る。

　「コロナ禍で外出を控えておられた高齢の患者さんが、やっと来られて診察したところ、緑内障でほぼ両眼失明に近い方、白内障が進行して水晶体が破裂してしまった方、ぶどう膜炎を併発している方など、深刻な重症者がとても多かったのです」

　このため同院では、緊急手術の連続となったが、それでも全力でできる限りの治療を行った。また訪問診療先でも、問題に直面する。特別養護老人ホームを訪れたが、コロナ禍で訪問期間の間隔が大幅に開いてしまったため、その間に患者の認知症が進行してしまい、眼科治療が必要なことがわからなくなってしまったのだ。ここでは、職員の方々の助力により、治療を施すことができた。

　このような状況下で、香山理事長は院内の清潔な環境維持を徹底してきた。オゾンガスによる消毒、ＣＯ2モニターによる換気状況の確認、空気中の細かな粒子を取り除くヘパーフィルターをエアコンに装着するなどの対策を講じ、院内全体を手術室並みの清潔さをキープしている。

　「患者さんはもちろんのこと、職員の感染も防がなければなりません。高齢の患者さんも多いですから、クリーンな院内環境の維持は不可欠なのです」

　また開業以来続けている、無料送迎は結果としてコロナ対策となっており、高齢の患者から喜ばれている。

精密な機器と熟練の技術で患者の負担を極力抑える

　診療・治療において香山理事長が重視しているのは、治療の正確性を高めることと、患者の負担をできるだけ抑えることにある。例を挙げると、糖尿病網膜症などの網膜硝子体手術では、0.1㍉未満の極小切開を可能とする、27ゲージシステムを取り入れている。また眼に与える負担を低減できる２万回転の硝子体カッターも導入し、低侵襲化を図っている。

　こうした手術は、精緻な眼底組織を立体映像に投影しながら治療できる３次元映像システムを用いて行われる。これにより、眼内のごく小さな病変や異常を把握しやすくなった。

　また白内障の手術においては、術前に患者の眼球を精密に解析し、そのデータを参照しながら施術を進められるシステムなど、治療の精度を高める機器も導入。眼の状態を術中に計測して、眼内レンズの度数決定をサポートするレフラクトメータも採用し、術後ＱＯＬの向上にも気を配っている。

• 手術機器にこだわり、正確性の高い手術を目指している
• 眼内の様子を高精細に映し出しながら治療できる網膜硝子体手術装置

患者の心に寄り添い各人に合った治療を

　香山理事長はこれまで多くの恩師から薫陶を受け、その時もらった言葉でいくつか忘れられないものがあるという。そのうちの一つが、「目の前の患者さんが自分の家族だと思いなさい。そうすればどういう治療をすればよいか見えてくる」というものである。どの患者にも寄り添ってその人に適した治療を行う、恩師の姿勢を受け継いで日々の診療にあたっている。またある恩師からで「３年前と同じ手術をしてはいけない。それをやったら医療の後退」と言われたという。つまり勉強を怠ってはいけないということで、実際香山理事長は、コロナ禍での眼科治療はどうあるべきかを考えるために、新型コロナウイルス感染症に関する論文を大量に読み込んだそうだ。

　だがこの厳しい状況下で、患者へ医療を提供し続けられるのは、職員たちの努力のおかげだと語る。スタッフが一丸となって患者に対応してくれていることに、感謝の言葉を述べている。

　こうした患者への思い、そしてたゆまぬ努力によって多くの患者から信頼を得て、その信頼が香山理事長の眼科医療に取り組む熱い思いを一層搔き立てているに違いない。

　　取材・文／牧野晋一