• 山形県

山形大学医学部東日本重粒子センター

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高度な設備で重粒子線治療を提供し
がん治療に貢献する

東北以北で初となる重粒子線治療施設が開設

 2021年、山形大学医学部に東北地方以北で初めての重粒子線治療を行う施設である東日本重粒子センターが開設された。高度医療で地域に貢献するだけでなく、医学生にとっても魅力的な存在となることを目指して立ち上げた。

 同センターは隣接する山形大学医学部附属病院と渡り廊下で移動できる。「総合病院に直結している重粒子線治療施設であることは大きな特徴です。他の診療科と連携しての治療も可能となっています」と根本建二センター長は語る。

 重粒子線治療の特徴は3つある。第1がピンポイントな照射が可能である点だ。重粒子線のエネルギーががんのある位置で最大となり停止する性質から、がん以外の細胞に当てる放射線を減らすことができる。陽子線治療とも共通する強みだ。

 第2の特徴は生物効果が高いこと。そのため従来のエックス線では効かない、がん内部の低酸素細胞にも効力を発揮する。患部が大きいがんになればなるほど低酸素細胞も大きくなるため、より重粒子線の利点を活かすことができる。

 第3に生物効果の高さゆえに治療期間が短期で済むことが挙げられる。がんの種類によっては、一度の照射で治療が完了するケースもある。「第2と第3の特徴は、重粒子線ならではのメリットです」と根本センター長は力を込める。

  • 附属病院から渡り廊下を進むと自動ドアが見える

回転ガントリーでの治療も22年に開始

 治療を行う照射室は、同センター内に2部屋ある。ひとつは固定照射室で、仰向けになった患者の横から照射する。前立腺がんに特化した装置で、246人(21年2月〜21年12月)の患者の治療が完了した。

 もうひとつが回転ガントリー照射室だ。回転ガントリーはドイツ・ハイデルベルク大学、千葉のQST病院に続く世界で3番目※の設備。360度どこからでも自由に照射できるため、患者が無理な体勢をとらずとも、それぞれに合わせた的確な位置から重粒子線を照射することができる。

 同センターの回転ガントリーは小型化され、建物も重粒子線治療施設としては非常にコンパクトだ。「加速器を地下に設置することで必要な面積が減りました。重粒子線治療を今後、国内外に普及させるうえでも都市型の設計は重要です」と照射設備の開発に尽力する、岩井岳夫副センター長は話す。

 回転ガントリーは22年春頃から稼働を始め、保険適用されている前立腺がん、一部の頭頸部がんや骨軟部腫瘍に、さらには先進医療として治療が可能ながんにも広げていく予定だ。また両室とも照射法には3Dペンシルビームスキャニング法を採用。がんの形状に合わせて筆で塗りつぶすようにビームを照射する。

  • 360度どこからでも照射可能な回転ガントリー照射室
  • 回転ガントリー照射室の裏側に位置する本体

  • 建物の地下に設置された加速器

見る者を楽しませる色鮮やかな設備

 連携する東北・新潟の医療機関との遠隔カンファレンスシステムを構築。山形県内を中心に、宮城県などの東北地方の他県からも患者が訪れる。山形県内や宮城県の患者は通院で治療を受けることが可能だ。遠方の場合、入院やホテルでの宿泊を選択する。

 「副作用を抑えた治療法ですので、遠方の患者さんは照射後に県内で観光やアクティビティを楽しむこともできます」と岩井副センター長。

 医療面だけでなく、建築面にも工夫が詰まっている。センター内は宇宙船をイメージしており、近未来的で色鮮やかだ。さらに案内表示や壁の装飾などのデザインには近隣の東北芸術工科大学が協力しており、個室の治療待機室では東北芸術工科大学制作のオリジナルコンテンツを、山形大学工学部提供の有機ELディスプレイで楽しむことができる。

  取材・文/高橋美森

  • 8つの治療待機室はそれぞれ惑星の名が冠されている

センター長
山形大学理事
副学長

根本 建二

副センター長
山形大学教授

岩井 岳夫

医療新聞社
編集部記者の目

 満を持して、東北以北で初となる重粒子線治療施設が誕生した。山形大学医学部東日本重粒子センターは世界で3番目となる回転ガントリー照射室を導入し、前立腺がんをはじめとした、さまざまながんに対する的確かつ負担の少ない治療が可能な体制を整えている。取材では照射室の裏側に位置する回転ガントリー本体も見せていただき、そのスケールの大きさに圧倒された。2022年春からの本格的な稼働が楽しみだ。

Information

山形大学医学部東日本重粒子センター

ホームページ

〒990-9585
山形県山形市飯田西2-2-2

TEL.023-628-5404

【受付時間】9:00〜17:00(土日祝日は除く)

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