投稿日: 2022年8月31日 11:45 | 更新:2022年9月1日14:49
国民病と呼ばれることも多い糖尿病。厚生労働省の令和元年「国民健康・栄養調査」の結果によると、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は男性 19.7%、女性 10.8%と、高い比率を占める※。それにもかかわらず、「糖尿病になっても、どうすればいいのかわからない」と困っている方や、「具体的な自覚症状がないから」と放置をしている方も多いかもしれない。
「そもそも糖尿病ってどんな病気なの?」「疑いがあると医師に告げられたら、すでに発症していたら、どんなふうに生活習慣を変えていけばいいの?」。そんな思いを抱えている人たちに向けて書かれたのが『疑問に答える糖尿病外来』(同文書院)だ。著者である、せいの内科クリニックの院長・清野弘明医師は、日本糖尿病学会認定の糖尿病専門医・糖尿病指導医。太田西ノ内病院糖尿病センター長、東北大学大学院分子代謝病態学糖尿病・代謝科臨床助教授などを務め、長年にわたり多くの患者を診てきた。
同書は全6章で構成されており、糖尿病の基本的情報から、治療をどのように生活に取り込んでいくかまで丁寧に説明されている。第1章では、糖尿病にまつわるよくある質問に答えるかたちで、発症のメカニズムや主な合併症、治療法などを医学的に解説。治療を継続させる心構えや医療費についても言及している。一度発症すると長く治療を続けることになる病気だからこそ、主治医をはじめとした医療従事者に頼ることの重要さも説かれており、前向きに治療に向き合おうという気持ちになる。
第2章では食事療法について解説する。糖尿病は普段の食生活と密接な関係にあり、治療の中心となるのは食事療法だ。摂取カロリーの目安や栄養素についてのみならず、外食やコンビニ食など自炊できないシチュエーションでの対応や、おやつの食べ方や飲酒の仕方などの嗜好品との向き合い方にも触れている。イラストや図を交えて丁寧に説明されているため、生活に取り入れやすそうだ。また、この章でも「食事療法がうまくできなかった日があっても、継続することを諦めないで」というメッセージが書かれており、たとえうまくいかない日があっても続けていくことの重要さを感じた。
第3章は運動療法について書かれている。食後すぐに運動することで、食後高血糖の解消につながるため、習慣化することが大切。お勧めの運動法やタイミング、血糖値を下げる以外の効果についても知ることができる。体の状態によっては運動を控えたほうがいい場合もあり、そのようなケースについても話題にしている。
第4章では薬物療法の飲み薬の種類やインスリン注射について、第5章ではシニア世代の糖尿病患者が健康に過ごすために気をつけること、第6章では新薬や血糖管理に役立つ機器などの最新情報にも触れている。
本全体を通して図解のイラストも豊富なので、具体的にイメージをしながら読み進めていくことができる。糖尿病について正しい知識を得たい方に、お勧めの一冊となっている。
※厚生労働省 令和元年「国民健康・栄養調査」の結果(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14156.html)