投稿日: 2024年1月20日 20:00 | 更新:2024年1月19日11:15
「痛み」とは……
「痛み」は、多くの患者さんに苦痛をもたらし、治療の対象となっています。2020年に国際疼痛学会は、「痛み」とは「実際の組織の損傷と関連するか、それに類似した、不快な感覚的および感情的な経験」と再定義しました。痛みは刺激によって感じるものだけでなく、神経の圧迫、損傷、伝達の異常によるものや、心の要因(不安やストレスなど)によるものなど、さまざまな要素によって引き起こされます。ペインクリニックでは、さまざまな手段を用いて痛みを治療しています。
「痛み」は、多くの患者さんに苦痛をもたらし、治療の対象となっています。2020年に国際疼痛学会は、「痛み」とは「実際の組織の損傷と関連するか、それに類似した、不快な感覚的および感情的な経験」と再定義しました。痛みは刺激によって感じるものだけでなく、神経の圧迫、損傷、伝達の異常によるものや、心の要因(不安やストレスなど)によるものなど、さまざまな要素によって引き起こされます。ペインクリニックでは、さまざまな手段を用いて痛みを治療しています。
診断と治療法
多面的アプローチによる痛みの伝達経路の解析
痛みが伝達される経路は複雑であり、単なる神経の情動が関与し、最終的には脳で痛みとして認識します。従って、不安、ストレスなども痛みに強く関連します。
ペインクリニックには、三叉神経痛や帯状疱疹など、体全体に広がるさまざまなタイプの痛みを抱えた人々が訪れます。
その中でも、下肢や上肢の痛み、首や背中の痛みなど、四肢や胴体の痛みを訴える患者さんが大きな割合を占めています。特に男性は腰痛をよく経験し、女性は頭痛の有訴者が目立ちます。
患者さんに合わせた治療法でADLの改善を目指す
ペインクリニックでは、さまざまな方法を用いて痛みを軽減します。
薬物療法には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やオピオイド鎮痛剤、神経障害性疼痛の場合はガバペンチノイドなどが使用されます。これら薬物療法が奏功しない場合、さらなる治療法を施行します。
その中心が神経ブロック療法であり、神経ブロック針を用いて、手術のように切開せずに痛みを取ります。さらに、痛みを緩和するために、電気刺激や神経を剥離する低侵襲治療(インターベンション)も行います。
また、痛みの治療には、自身の症状を客観視することも重要で、マインドフルネスなどの認知行動療法も重要です。
さらに、自ら身体を動かすことも重要です。理学療法、作業療法などのリハビリテーションを取り入れることも、痛み治療の手段のひとつです。
主な治療法
◎薬物療法
◎理学療法
◎認知行動療法
◎神経ブロック療法
◎低侵襲治療(インターベンション)
治療法
実施にあたっては診断が重要/神経ブロック療法
神経ブロック療法は、痛みのある部位または周囲に針を刺し、局所麻酔薬を注入する治療方法であり、これにより痛みの緩和が図られます。その他、高周波熱凝固という電気から変換した70〜90度の熱による治療、またはパルス高周波という42度以下の磁場を使用する治療もあります。
実施にあたっては、診断が重要です。どこに痛みがあるのか、なぜその場所で痛みを感じるのかを正確に特定するため、神経に対して診断的治療目的ブロックを行うことは重要です。
効果の一つは、ブロックにより局所麻酔薬が対象の神経に的確に作用することです。局所麻酔薬は少量であるため、中枢神経系への副作用がなく、眠気やめまいなしに痛みを治療することができます。
もう一つの効果は、交感神経系の遮断です(交感神経ブロック)。交感神経系は体を興奮状態にし、血管を収縮させます。ブロックにより血管が拡張され、血行が改善されることがあります。
さらに、末梢運動神経および感覚神経のブロックにより、一時的な筋肉の緊張緩和と痛みのある領域周辺の血管の拡張が実現できます。この状態での運動とリハビリテーションにより、血行の改善が期待できます。
治療法
低侵襲治療(インターベンション)で体に負担なく痛みを軽減/低侵襲治療
低侵襲治療(インターベンション)は、手術のような皮膚切開を必要とせず、痛みの軽減を目的とする治療法です。高齢者にとっても身体的負担が少ない利点があります。
椎間板ヘルニアの低侵襲治療に経皮的核摘出術があります。
この方法では、椎間板から突出し神経を圧迫している髄核(ヘルニア)を、皮膚から挿入した鉗子を使って摘出します。
摘出には、鉗子以外に高周波電流やプラズマを用いて髄核を蒸散、凝固させる方法もあります。
脊柱管狭窄症の場合も、低侵襲治療が適用されます。神経を圧迫している変性した椎間板、靭帯を摘出したり、神経に対する圧迫癒着を剥離したりすることで、腰下肢痛の治療を行います。
また、脊髄神経を直接刺激する、脊髄刺激療法もあります。この方法では、脊髄を電気刺激する装置が埋め込まれ、自らの刺激を調整して痛みを軽減することが可能です。
※『名医のいる病院2024 整形外科編』(2023年10月発行)から転載
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