投稿日: 2024年1月31日 12:00 | 更新:2024年2月5日17:17
加齢などの要因で水晶体が濁り、視力が低下する疾患です。QOL(生活の質)と健康寿命延伸のために、手術の前には希望する見え方について、医師と十分に相談しましょう。
疾患の特徴
水晶体が混濁して視力の低下を引き起こす
水晶体は目の中でカメラのレンズのような役割を担っています。外から入ってきた光を水晶体で屈折させてピント調整をすることで、網膜に像が写ります。
透明な水晶体が濁っていく疾患が白内障です。発症原因はいくつかありますが、年齢とともに水晶体が濁る加齢性白内障が大半を占めます。
早ければ40代で発症することもあり、有病率は50代以降になると上がっていき、80代では、ほぼ全員が白内障だといわれています。したがって、加齢性白内障は老化現象の一種ともいえます。
他に先天性やアトピー性、外傷性などによる白内障もあります。
白内障は混濁する水晶体の部位や広がり方もさまざまです。多くみられるのは、水晶体の周辺部から濁り始め、だんだんと中心に向かって白濁が広がっていく病態(皮質白内障)です。そのため中心部が濁っていない初期段階では、ほとんど自覚症状がありません。
白内障が進行すると、目に入ってきた光が十分に網膜へ届かなくなったり、光が濁りによって散乱したりするようになり、見え方に関するさまざまな症状が出てきます。視力が低下する、まぶしく感じる、暗く見える、視界がかすむ、物がぼやける、二重三重に見えるなどが生じ、日常生活に支障を来すようになります。
主な治療法
根治のためには白内障手術を実施
白内障の診断では視力検査や屈折検査、コントラスト感度検査などの見え方に関する検査のほか、水晶体がどのくらい混濁しているかを確認する細隙灯(さいげきとう) 顕微鏡検査を行います。目に細い光線を照射して、水晶体や角膜を観察します。他にも眼底検査や眼圧検査、光干渉断層計(OCT)検査などで、白内障以外の眼疾患がないかどうかも確かめます。
初期段階では点眼薬などで進行を遅らせることはできますが、混濁した水晶体を元の透明な状態に戻すことはできません。根治には濁った水晶体の代わりに人工の眼内レンズを入れる手術を行います。手術適応は患者さんの自覚症状や、日常生活に支障が出ているか、他の眼疾患を罹患しているかなどから判断します。
検査や患者の希望から術後の見え方を検討
術前に仕事や趣味などの送りたいライフスタイルを踏まえた、希望の見え方について医師と相談することが大切です。眼軸長(角膜から網膜までの距離)や前房深度(角膜から水晶体までの距離)、角膜内皮細胞(角膜の内側にある細胞)、角膜曲率半径 (角膜のまるみ)などを検査して、眼内レンズの度数や種類を決定します。
白内障手術では、まず顕微鏡下で、水晶体を包んでいる水晶体嚢(のう)に2~3ミリの小切開をします。そこから手術器具を挿入し、超音波で水晶体を砕いてから吸引します。そのあと水晶体嚢に眼内レンズを入れ、固定すれば完了です。水晶体嚢の切開や水晶体を砕く際に一部レーザーを使用する、自由診療の術式もあります。基本的には片目が15〜30分程度で終わる手術で、日帰りで実施する医療機関も増えています。ただ、症状が進行して水晶体が硬化している、他に眼の病気を合併しているといった場合には、時間が長くかかることがあります。
眼内レンズは単焦点型と多焦点型の2つに大別
眼内レンズは大きく分けて、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの2つがあります。単焦点眼内レンズは1カ所にピントが合うもので、保険適用されています。患者さんの希望でピントの位置を決めますが、ピントが合わない距離を見るためには眼鏡の着用が必要です。
多焦点眼内レンズは複数の距離にピントが合わせられます。遠・中・近の3カ所にピントが合う3焦点眼内レンズも登場しています。眼鏡の着用頻度を減らせますが、コントラストが落ちる、光がまぶしく見えるなど、見え方が合わないケースもあります。
一部の多焦点眼内レンズは保険適用されていますが、基本的に多焦点眼内レンズを選択すると手術は選定療養(または全額自己負担)で行います。選定療養では手術は保険適用で実施できますが、多焦点眼内レンズの費用は自己負担として追加で支払います。手術費用についても事前に医師に確認してみてください。
※『名医のいる病院2023 眼科治療編』(2023年3月発売)から転載
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