【疾患センター解説】不具合のある基本動作を改善 人工関節センター

【疾患センター解説】不具合のある基本動作を改善 人工関節センター

股関節や膝関節は加齢などが原因で、軟骨が摩耗、骨が変形して、動作時に痛みが生じます。この損傷した関節を、手術でインプラントに置き換えます。術後はリハビリで療法を施し、関節の機能回復、QOLの改善を目指します。
人工関節センターとは
整形外科がある、中規模以上の病院で人工関節手術を専門に担う部署
各院が治療日程、リハビリメニューを策定
現在、人工関節の手術数は膝関節手術が年間約9万件、股関節手術が年間約7万件です。高齢化も手伝い、今後も右肩上がりで増えるとみられています。
人工関節センターは整形外科がある、中規模以上の病院で人工関節手術を専門に担う部署です。外来で入院前の諸検査から入院治療、退院までの諸検査やリハビリテーション・生活指導など全てを円滑に進められるよう、各医療機関はあらかじめ独自の治療計画を定めています。
人工関節の手術は早めに治療計画を立てるのが賢明です。なるべく症例数が多く、日本人工関節学会の人工関節認定医がいる医療機関をいくつか探し、できるだけ早めに受診してください。ネットや広告の情報だけでなく、患者さん同士の口コミ情報も大いに参考になります。例えば、変形性股関節症の早期の症状は、長時間歩行後の股関節周りの重だるさであったり、歩き始めの痛みであったり、靴下がはきずらくなってきたなどです。このような症状があれば、早期の変形性股関節症である可能性がありますので、専門医受診をお勧めします。痛みを我慢して歩行困難になってからでは、病院の選択肢も狭まりますし、術前の検査も不十分になります。病状が悪化してからの受診は避けるべきです。仮に適切な治療がされたとしても、回復が遅くなり、手術の合併症のリスクが高まります。

損傷した関節をインプラントに置き換えます

変形性関節症とは
軟骨が薄くなった関節の骨同士がぶつかり、激しく痛み始めます。
変形性股関節症は脚長差や歩行障害を引き起こす
人工関節が必要な関節症は主に、膝と股関節です。
膝の病気に変形性膝関節症があります。膝関節のクッションである軟骨が加齢に伴い摩耗し、進行すると、軟骨の薄い関節の骨同士が直接ぶつかり、激しい痛みを引き起こします。原因は主に、関節軟骨の老化。ほかにも、要因として挙げられるのが肥満です。肥満は膝、股関節のどちらにも多大な負荷がかかりますが、特に変形性膝関節症は体重の影響を受けやすく、予防や進行を止めるには、体重のコントロールも重要です。
股関節は大腿骨のボール状の骨頭、それを覆い包む骨盤側の受け皿である寛骨臼から成り、両骨の端は軟骨で覆われています。股関節の病変は主に、変形性股関節症があります。これは関節軟骨がすり減り、骨頭や寛骨臼が変形するものです。変形性股関節症は肥満よりも先天的な要因を受けることが多く、先天的に骨頭の受け皿である寛骨臼が小さめであると、40代後半頃より変形性股関節症が発症し、徐々に脚長差や歩行障害を引き起こします。
ほかにも、股関節の関節症には特発性大腿骨頭壊死症があります。これは大腿骨の一部が血流の低下により壊死する疾患です。病状が進行すると、壊死部が潰れ、大腿骨頭の荷重部が潰れ、変形性股関節症と同様の病変を示します。人工股関節の原因疾患の中で占める割合は約2%と少数ですが、近年は増加傾向です。

主なポイント

治療法について
薬物療法や理学療法など保存療法が無効な場合、人工関節の置換術を選択します
低侵襲で術後の回復が早い前方進入法が台頭
人工関節手術は薬物療法や理学療法といった保存療法が無効の場合、実施します。
変形性膝関節症の治療の一つが人工膝関節全置換術です。傷んだ膝関節の骨、軟骨を切除して大腿骨側、脛骨側のそれぞれに人工関節を挿入して、関節機能を再建します。膝関節の傷んでいる側のみを人工関節に置き換える人工膝単顆部置換術は骨の変形が軽度で、膝関節の可動域が良く、靭帯が傷ついていなければ適応になります。
変形性股関節症の治療には股関節の臼蓋側と大腿骨頭側に人工関節を挿入し、関節機能を再建する人工股関節全置換術を選択します。大腿骨頸部骨折など、大腿骨側のみの損傷には人工骨頭置換術のみで対応することもあります。
従来の人工股関節置換術は腱や筋肉を切って置換した後、その組織を修復する方法が主流でしたが、筋力の低下などの不安材料もありました。しかし、現在は筋腱組織を切離しない低侵襲の術式、前方進入法が主流になりつつあります。
この方法の場合、股関節の前方より10cm以下の皮膚切開で股関節周囲筋を切離せずに、人工股関節を設置することができます。メリットは術後、リハビリの開始が早く、速やかに筋力が回復し、入院期間が短くて済むことです。術後の脱臼リスクが低率で、疼痛も少なく、左右両側を手術しやすいという利点もあります。
手術自体は決して容易ではなく、高度な技術が求められます。今後広く普及するには、手技と知識に長けた後進の育成が必要です。

主な治療法

※『病院の選び方2023 疾患センター&専門外来』(2023年3月発行)から転載
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