【疾患センター解説】脊椎脊髄のエキスパートが多種多様な治療を提供 脊椎脊髄センター/脳脊髄センター

【疾患センター解説】脊椎脊髄のエキスパートが多種多様な治療を提供 脊椎脊髄センター/脳脊髄センター

背骨や、その中を通る脊髄に生じた疾患を治療するセンターです。整形外科や脳神経外科などの複数の診療科が連携して、さまざまな脊椎脊髄疾患に立ち向かっています。
脊椎脊髄センターとは
整形外科医と脳神経外科医が協働して治療にあたります
背骨や神経の病状に応じて最適な治療を提供
脊椎脊髄とは、いわゆる「背骨」と、背骨の中を通っている神経のことをいいます。脊椎脊髄センターでは、首・背中・腰などの椎骨や、その神経に関係する疾患(脊椎脊髄疾患)を対象にした診療を行っています。
脊椎脊髄疾患は、主に整形外科と脳神経外科が治療対象としている領域です。どちらの診療科も幅広い疾患を対象としており、脊椎脊髄センターでは、それぞれの得意な治療法を活かして一緒に診療にあたります。
センター内の外科の協働にとどまらず、麻酔科(ペインクリニック)やリハビリテーション科との連携もしっかり行っています。さまざまな脊椎脊髄疾患に対し、いろいろな治療法で対応します。
センター化の最大のメリットは、各診療科が得意としている治療法に偏らずに、患者さんごとに最適な治療を選ぶことができること。診療科の垣根を超えてカンファレンスで意見を出し合い、治療方針を決定していきます。
また、受診する患者さんにとってもメリットは大きいです。脊椎脊髄疾患は、欧米では基本的に脳神経外科で治療が行われています。一方、日本では整形外科を中心に、脳神経外科の一部と麻酔科(ペインクリニック)などが診療にあたっています。複数の診療科が担当しているため、症状にお悩みの患者さんが、どこを受診したらいいのかわからなくなりがちです。
センター化によって、患者さんは受診先を迷うことがなくなりました。患者さんを大病院に紹介する地域医療機関にとっても同じことがいえるでしょう。

脊椎脊髄センター

脊椎脊髄疾患とは
神経が集まる背骨の疾患によって、全身に痛みやしびれが生じることも
背骨や神経の疾患に幅広く対応していく
脊椎脊髄疾患で患者さんの数が多いものとしては、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの腰椎変性疾患、頸椎症などが挙げられます。
腰椎椎間板ヘルニアは、椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板の内部にある髄核がはみ出し、神経を圧迫する疾患です。腰痛に加えて下肢症状が生じることがあります。
腰部脊柱管狭窄症は、腰椎や椎間板の変性などにより、骨の中に位置する神経の通り道である脊柱管が狭くなる疾患。中の神経が圧迫されて痛みやしびれが生じます。
頸椎症は、加齢などの理由から頸椎が変形することで、脊髄や脊髄から枝分かれした神経根が圧迫され、首や四肢に痛みやしびれなどが起きる疾患です。
また、脊髄腫瘍や側弯症などの治療に対応している脊椎脊髄センターもあります。
脊髄腫瘍は、脊髄の中や脊髄を包む硬膜の内外にできる腫瘍のことで、背中の痛みや麻痺などの自覚症状があります。
側弯症は、脊椎が左右に弯曲している状態をいいます。小児の側弯や、加齢に伴って生じる変性側弯症など、幅広い年代の患者さんがいます。
また、中には脊椎脊髄疾患だけでなく、例えば全身合併症があるといった理由で、手術自体の難易度が高いケースもみられます。

脊椎・脊髄の構造

治療法について
病状に合わせて、保存的治療から低侵襲・高侵襲な手術まで幅広く実施
幅広い治療の選択肢から最適な手技を検討する
まず診察で、どのような症状があるか見つけ出します。レントゲン、CT、MRI、sterEOSイメージングシステム(脊椎の全身撮影が可能な検査)などの必要な画像検査を行っていきます。
治療方針については、複数の診療科が参加するカンファレンスで話し合います。まずは薬物療法や理学療法などの保存的治療を行うケースが多いです。ペインクリニックの治療法である神経ブロック療法で痛みの緩和を目指すこともあります。進行した場合には手術を検討します。
手術では顕微鏡、内視鏡手術に加え、側方椎体固定術等の低侵襲脊椎手術を行っています。例えば腰椎変性疾患では、専用の開創器を使って背骨の側方から固定術を行うことで、背中の骨や筋肉への負担や出血、術後疼痛を減らすことが期待できます。
側弯症や一部の脊髄腫瘍などでは高侵襲の手術も実施しています。側弯症では、背中を切開して金属製のスクリューやロッドを用いて脊柱をまっすぐに矯正します。脊髄腫瘍では、背中を切開して腫瘍を摘出します。
治すためにはどうしても高侵襲な治療が必要となることもあります。それでも、できるだけ多種多様なテクニックを使い、出血を抑えるなど患者さんの体に負担が少ない低侵襲性の追求が大事になります。
さまざまな脊椎脊髄疾患に対応するために、保存的治療から低侵襲治療、高侵襲な治療まで網羅することを目指しています。

主な治療法

※『病院の選び方2023 疾患センター&専門外来』(2023年3月発行)から転載
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