【胃がん】名医や病院ランキングを紹介


【胃がん】名医や病院ランキングを紹介

胃がんについて
主に胃壁の表面の粘膜に生じ、進行していくがん。治療法や手術選択を通じて、根治を目指すと同時に機能の維持を図るアプローチが一般的となっています。手術や薬物療法などの治療方法を駆使し、患者さんの生活の質を向上させつつ、病状をコントロールすることが可能です。
疾患の特徴
ピロリ菌の感染や逆流により生じるがん
胃がんは、胃の内部の粘膜で発生し、進行すると胃壁の外側に広がっていく疾患です。初期段階では症状はほとんど現れず、進行するにつれて発生場所に応じてさまざまな症状が現れます。胃の中央から出口にかけて生じる胃がんは、ピロリ菌の持続的な感染や高塩分の食事によって胃の粘膜が傷つき、症状として胃もたれや吐き気などが現れることがあります。ピロリ菌の感染者は、衛生環境の整備に伴い減少していますが、一度感染すると胃の中にとどまり続けるため、中高年層を中心にいまだに感染者は多いです。また最近はピロリ除菌後の胃がんも多く発見されています。一方、胃の入り口付近に生じる胃がんは、胃酸が食道に向かって逆流し、胃と食道の境界付近を傷つけることによって発症します。このタイプは、内臓脂肪や食べ過ぎが逆流の原因とされ、胸のつかえなどを生じます。どちらのタイプの胃がんも、タバコや過度のアルコール摂取が発症リスクとされています。
胃がんが進行すると、さまざまな症状が現れる可能性がありますが、一般的には無症状とされています。ただ、胃痛は胃炎や胃潰瘍の代表的な症状で、胃痛がきっかけで受けた検査で胃がんが見つかることもあります。また、がんからの出血によって、動悸、息切れ、体のだるさなど貧血の症状も現れることがあります。
胃がんの検査には、内視鏡検査が非常に有用です。内視鏡検査は胃壁の粘膜を詳細に確認でき、X線検査よりも早期の胃がんを発見しやすく、高い精度で検査が行えます。
胃がん転移のパターン

胃がん転移のパターン

(木下 敬弘)
主な治療法
術後のQOLに配慮した手術も行われるように
胃がんは、がんの中で依然として日本人の死亡数が多い状況にありますが、早期に発見できれば、適切な治療によって多くの場合、根治が見込めるようになってきました。現在では、手術による体への負担の軽減や、術後のQOL(生活の質)維持を目指す取り組みも行われています。
近年は低侵襲化や機能温存を目指した術式が広がってきました。例えば、従来は主に胃の3分の2を切除する幽門側胃切除や胃全摘が選択されてきました。大きく胃を摘出し、胃の入り口(噴門)や出口(幽門)が切除されると、ダンピング症候群と呼ばれる動悸、めまい、冷汗、全身倦怠感などの症状を起こすこともあります。食事摂取量も体重も減少し、QOLが低下する可能性があります。噴門に近い小さめの病変では、かつては胃全摘が選択されていましたが、最近は幽門側を温存する噴門側胃切除が普及してきました。また胃の中央付近にある小さい早期胃がんの場合、噴門も幽門も温存する幽門保存胃切除が選択されるときもあります。
腹腔鏡下手術は、腹部に数カ所に穴を開け、そこから腹腔鏡(カメラ)や鉗子を入れて処置します。手術用の切開部が3~4mmと小さく、術後の運動能力の低下や術後疼痛が軽減され、早期回復が期待されます。ただし、不十分な技術で行うことで、開腹手術よりも合併症のリスクが高まることも懸念されていますので、経験豊富な施設で受けると良いでしょう。
2018年に保険適用になったロボット支援手術は、腹腔鏡下手術の進化型で、鉗子の動きがスムーズで手術の精度や安全性が高くなるため、さらに術後の回復が早くなることが期待されています。
ほかにも、切除不能進行胃がんや再発したがんに対し、また、術前術後の補助療法として薬物療法が選択されます。近年は免疫チェックポイント阻害剤や多くの分子標的薬が使用可能となってきており、選択肢が増加しています。放射線治療は、切除不能進行胃がんに対する、出血や疼痛のコントロールを目的とした、緩和的な補助治療法として用いられます。症状の有無やピロリ菌除菌歴の有無に関わらず、胃内視鏡検査を受け、胃の内部を常にチェックしておくことが大事です。
治療法の種類
手術
胃をすべて切除する全摘術のほか、胃の下部を温存する噴門側胃切除、上部を温存する幽門側胃切除など機能温存を目指した術式が普及。腹腔鏡下手術・ロボット支援手術で行うこともある。

胃がんの手術方法

薬物療法
手術では切除が難しい症例の治療や、ステージが進んだ症例の術後再発予防に用いられるほか、術前に計画的に組み合わせることもある。
(木下 敬弘)
内視鏡治療について
胃がんは、早期発見と適切な治療が生存率を左右します。内視鏡を使って胃の内側からがんを切除するため、体表に傷がなく、臓器も温存できるため、手術にくらべて体への負担が少ないことが最大のメリットです。入院期間も短く、術後の回復も早いため、患者さんのQOL(生活の質)を維持することができます。
早期発見で広がる治療の選択肢
胃の内側の浅い層にとどまるごく初期の胃がんに対しては、開腹手術を避けて病変を胃内から切除する内視鏡治療が積極的に採用されています。近年、主流となっているのはESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)で、従来の内視鏡治療と比較して、粘膜表面に広がったがんをひとかたまりで切り取れる利点があります。ただし、不十分な技術で行うと胃壁に穴が開く穿孔などのリスクが高まることに留意が必要。外科手術と同様に治療を担当する医師の経験が極めて重要となります。もうひとつの内視鏡治療のEMR(内視鏡的粘膜切除術)は、大きな病変には適応できませんが、短時間で切除ができるメリットがあります。
経験豊富な医師が在籍していれば、症例数が限られている新しい医療機関や若手医師が治療を担当する場合でも、指導医の経験によって、カバーすることができます。
定期的なカンファレンスなどを通じて他科の医師と連携を図ることも大事なポイント。特に診断や手術後の確認を行う病理医が在籍していることは大きな意味を持ちます。
高齢や既往症を抱える患者さんなど、手術リスクが高まる場合には、より低侵襲な内視鏡治療が望まれます。麻酔科医と連携し、治療の際になるべく体に負担がかからないように管理をすることが望まれます。
胃がんの深達度

胃がんの深達度

(港 洋平)
医療機関選びのポイント
POINT1 年間の合計治療実績、腹腔鏡またはロボット支援手術の治療実績が目安
胃がんの症例数が目安となります。腹腔鏡手術やロボット支援手術は高度なスキルが求められ、合併症が少なく手術の質が担保された手術を受けるには、経験豊富な医療機関で行う必要があります。
POINT2 内科、病理診断科など診療体制を確認する
現在では、胃の全摘手術を回避し胃を温存する手術が普及しています。この手技を行うには高度な技術とともに、術前の正確な内視鏡診断が必要となります。また進行した胃がんの治療には、病理医や薬物治療を専門とする内科医との緊密な連携が欠かせません。経験豊富な医療機関であれば、適切な医療体制が整備されていることが期待できます。日本胃癌学会が公表している認定施設のリストも参考となります。
POINT3 術式の実績と割合データの公表
術式には複数の切除法やアプローチ法が存在し、それぞれに特長があります。病院の専門性を把握するために、過去の手術実績データを検証することが重要です。例えば、噴門側胃切除や幽門保存胃切除の症例数を確認することで機能温存手術への力の入れ具合を、腹腔鏡やロボット支援手術の症例数を確認することで低侵襲手術への力の入れ具合を読み解くことができます。
(木下 敬弘)
※『名医のいる病院2024』(2023年12月発行)から転載

胃がんの名医について
名医インタビュー
胃がん治療のトップランナーが、これまでの実績、最新の治療法や研究などを語っています。
名医リスト
胃がん治療で活躍し、「名医」として評判の高い医師について徹底独自調査を実施。その結果をもとに全国の胃がんの名医58人をリストにてまとめました。胃がんの可能性を指摘されその診断や今後の治療法について不安に思っている方、胃がんを患い現在の医師の治療法に疑問を感じている方、いざというときの備えとして確認しておきたい方などにご利用いただき「不安の解消」の一助にければ幸いです。

胃がん治療の医療機関について
消化器・内視鏡センター
消化器センターは内科と外科が協力し、ワンチームとして診断から治療までシームレスな医療を実現しています。

治療実績ランキング
全国の医療機関4,424病院への独自のアンケート調査(1年間の手術・治療実績)に基づく胃がんの全国・地方別の治療実績ランキングです。名医リストと同様に病院選び・医師選びにご利用いただき「不安の解消」の一助にければ幸いです。
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胃がん治療に注力している医療機関へのインタビューです。
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