投稿日: 2024年5月9日 18:00 | 更新:2024年5月16日11:41
不整脈について
心臓は微量の電気が心房や心室に伝わることにより拍動していますが、不整脈は、この電気現象が乱れ、心臓の拍動が速くなったり、遅くなったり、不規則になったりする疾患であり、息切れ、めまい、ふらつき、失神などの症状が現れます。
疾患の特徴
刺激電導系に障害が起き、心臓のリズムが乱れた状態
不整脈は心臓の拍動の乱れのことで、動悸、息切れ、めまい、胸痛、意識消失などの症状を引き起こすことがあります。
心臓は規則正しくリズムを刻み、拍動するポンプ機能を担い、1分間に約5lの血液を体の隅々に送っています。1時間で約3600回、1日に約10万回、収縮と弛緩を繰り返し、1分間の回数を心拍数といいます。
心臓を適切な回数で拍動させるため、刺激伝導系という組織があります。微量な電気信号を心房から心室に伝え、心筋を適時に収縮させます。
不整脈はこの刺激伝導系に障害が起き、異常な電気刺激が発生してリズムが乱れた状態です。心臓が適切に制御されず、心機能が維持できません。
不整脈の原因として特に多いのは、冠動脈疾患、心臓弁膜症、心不全などの心疾患です。また、不整脈を悪化させる要因には疲労やストレス、睡眠不足、飲酒、喫煙、肥満、夜間無呼吸症候群などがあります。
不整脈は経過観察のみでよいものと早期の治療が必要なものに分けられます。
致死性不整脈には心室細動、持続性心室頻拍、心室頻拍の一種のトルサード・ド・ポワンツ、心房細動などがあり、基礎疾患の有無を問わず、放置すると死に至る可能性が高いため、緊急治療が必須です。
致死性不整脈ではありませんが、脈拍が100以上の頻脈性不整脈の中で最も多いのが心房細動です。心房内で不規則な電気の乱れが生じ、心房筋が震えた状態になる疾患です。心機能が低下して心不全を招くだけでなく、心房内(特に左心耳内)に血流が滞留して血栓を生じ、その血栓が脳血管に流出して重症の脳梗塞を招くこともあり、予防のための治療が欠かせません。
脈拍が1分間に40以下になる徐脈性不整脈には、心房から心室に命令が適切に伝わらない完全房室ブロック、電気信号が生まれる洞結節が異常をきたす洞不全症候群があります。めまいや失神、心不全などの症状がある場合には、ペースメーカー治療が必要になります。
主な治療法
薬物治療と心筋焼灼術に大別
不整脈の治療は薬物治療と心筋焼灼術に大別できます。
薬物治療は原因や症状に応じて、異なる薬剤を使います。脈拍が不規則になる期外収縮や心房細動は抗不整脈薬で電気信号を抑制しますⅠ群は電気刺激の心筋までの伝わりを遅らせ、頻脈性不整脈を改善。Ⅱ群はβ遮断薬で交感神経の働きを抑え、心筋の興奮を鎮め、Ⅲ群は心筋細胞の入り口を遮断してカリウムイオンの流入を抑え、不整脈を防止。Ⅳ群は心房で起こる不整脈に使用し、心拍数を抑えます。
心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)は不整脈の発生源を焼灼し、電気信号の異常発生を抑えます。カテーテルを鼠径部から挿入して心臓に達した後、電気信号の異常発生部を特定。カテーテル先端を密着させ高周波の電流を流すことにより発生源を焼灼します。発作性あるいは短期持続性心房細動では85%以上の成功率になります。
一方、長期持続性心房細動への効果は十分ではなく、脳塞栓の予防として、左心房のなかの血栓が形成されやすいとされる左心耳を閉鎖デバイス(WATCHMAN®)で閉鎖する経皮的左心耳閉鎖術も行われています。
致死的不整脈で、心筋焼灼術でも十分に効果が得られない場合は、不整脈を制御するため植え込み型デバイス治療を検討します。ICD(植込み型除細動器)やCRT-D(両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器)、CRT-P(両心室ペーシング)、S-ICD(皮下植込み型除細動器)などが挙げられます。ICDは心臓の動きを監視、心室頻拍・細動などの命にかかわる不整脈が生じた場合、本体からリード線を通じて電気刺激や除細動を行います。
時にデバイスやリード感染が生じます。リードは植込み年数が長い場合、静脈や心臓の壁に癒着を起こし抜けない状態になります。そこで現在は主にエキシマレーザーやリード抜去器具を使用した、経皮的リード抜去術が行われています。また、心房の痙攣を抑える外科的治療がメイズ手術です。手術では心房細動を起こす原因の心房の壁を切除、縫合し、組織を冷凍、もしくは高周波を当てて焼灼します。
治療法の種類
薬物治療
不整脈の原因となる異常な電気信号を抑制したり、心拍数を整えたりする薬を用いて行う治療。
ペースメーカー
心臓の拍動を正常に保つために、人工的なペースメーカーを体内に埋め込む治療。
植込み型除細動器(ICD)
心室細動などの致死性不整脈を感知して、電気ショックを流すことで不整脈を停止させる治療。
カテーテルアブレーション
心臓内にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、異常な電気信号が発生する箇所を焼き切ったり、レーザーで切除したりする治療。
医療機関選びのポイント
POINT1 症例数の多さ
症例数の多さは治療水準に結びついている。たとえばカテーテルアブレーションの場合、週に4例、すなわち年間200例以上実施していることが一つの目安となる。
POINT2 不整脈専門医の在籍
不整脈専門医の在籍の有無も重要。さまざまな不整脈の治療体験、治療技術を有し、適切な判断・治療の選択が期待できる。日本不整脈心電学会のホームページでは専門医が在籍する医療機関を公開しているので、参考になる。
POINT3 ICD、CRT植込みなどができる
ICDやCRT植込みなどのデバイス治療が実施できる認定施設であることも幅広い治療が可能な医療機関であることの目安となる。
※『名医のいる病院2024』(2023年12月発行)から転載
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