投稿日: 2017年5月17日 17:48 | 更新:2017年5月17日17:49
医療法人慈風会
厚地記念クリニック
PET画像診断センター
院長 陣之内 正史
じんのうち・せいし●日本医学放射線学会認定放射線科専門医、日本核医学会認定核医学専門医ほか。
PET検査とは、簡単にいうと、事前に投与した薬が病巣に集まりそこが光って見えるというものだ。薬の静脈注射後、1時間ほど安静にして検査機に入り、寝ているだけで終わる検査であり、痛みや、造影剤のような副作用もないため、受診者の負担も抑えられている。
加えて、一目で病変を見つけることが可能で、良悪性の鑑別はもちろん、病期の診断、治療後の効果や残存腫瘍の診断、経過観察および再発診断にも有効に利用できるため、がん診療には欠かせないものだ。
PETにCTを組み合わせたPET/CTのいち早い導入など、常にPET検診のトップを走り続けてきたのが鹿児島県鹿児島市に位置する厚地記念クリニックだ。同院では、2016年、世界最先端の技術を取り入れた新しいPET/CTの機器を導入した。「2017年1月の臨床検査開始以来、3ヶ月で約550件の検査を行っています。従来の映像との違いは一目瞭然で、その能力は予想以上のものでした」と陣之内正史院長は言う。
今回導入されたGE社製の最新PET/CT機器は、2017年3月現在、世界でもトップクラスの研究機関にまだ数台しか設置されていない。日本はもとよりアジアオセアニアでも初めての導入となる。
PET/CTは病巣を見つけるPETと、位置を確定するCTの組み合わせだが、大きな進化はPET部分にある。PETは光信号で病変を発見するが、それを電気信号に変える際に、これまで真空管を使っていた。新機器では、それを半導体に変えることで処理スピードが格段に速くなり、ノイズが減って精度があがったのだ。そのことにより、病変を診る解像度は2倍になり、検査に必要な放射線の量も減らすことができる。もちろん、検査時間も従来の半分で済むようになった。さらにCT部分にも改良を加え、従来は1回転で16スライス程度の画像だったのが1回転128スライスにまで細かく診られる。つまり、より小さな病変の発見も容易になったわけだ。
加えて、この最新機器には新たな可能性も期待されている。現在、国内におけるPET検診の95%はがんを対象として使われているのに対し、脳の細かい解剖まで分かるので、認知症診断に適応できる能力に優れているのだ。有効な治療法が見つかっていないという壁はあるものの、認知症の要因と言われるアミロイドやタウなどの薬剤を使った検診によって、認知症であるのか、ないのか、その程度はどれくらいなのかを診断できる可能性がある。
現実的にもここ1〜2年のうちにアミロイド薬剤の導入も進むそうだ。近い将来PETによる認知症検診も見え始めたと言える。
厚地記念クリニックがPET画像診断専門のセンターとして開設されたのは2002年。PETという名前すら一般には認知されていない時代で、全国でも5台目、西日本の民間病院では初めてのPET機器導入であった。
これより前の1993年、すでに留学先のフランクフルト大学でPET診断と出会い衝撃を受けたという陣之内院長は、当時、宮崎医科大学放射線科に在籍していた。しかし、これからはクリニカルPETの時代が来ると確信し、センター設立と同時に院長として就任。以来15年間、6万7700件ものPET検査を行ってきた(2002年6月〜17年3月)。まさに、日本のPET画像診断のパイオニア的存在である。
「1年に一度、毎年検診に来られて安心して帰られる患者さんもいらっしゃいます。がんが見つかった場合もどこにどれくらいというのが分かるので、治療の計画を立てるのに役立ちます。通常、検診の場合は結果を患者さんに後日送付したりする施設も多いのですが、画像検査の結果は30分程度で分かるので、私は必ず患者さんと一緒に画像を見ながら直接お伝えするようにしています。不安なまま結果を数日待たなければいけないのはつらいですからね」と語る陣之内院長。
同院は、最先端のPET/CT機器を導入したことで、さらに細かい早期がんの発見も可能になり、将来的には認知症への適応も視野に入れている。進化するPET/CT検診は高齢化が進む現代に大きな光となるだろう。
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