投稿日: 2017年8月10日 15:25 | 更新:2017年8月10日15:25
一般社団法人 巨樹の会
新武雄病院
インタビュー 院長 西田 憲記
にしだ・けんき●高知県土佐清水市足摺岬出身。医学博士。1984年徳島大学医学部卒業後、徳島大学脳神経外科に所属し、脊髄脊椎外科疾患を専攻。96年北九州市小文字病院で脊髄脊椎外科を開設。小文字病院院長を経て現職。
人が直立歩行であるがゆえに、常に背骨は重力による負荷を強いられており、そこに加齢による骨の老化や生活習慣による異変を起こすことが多い。そうした疾患の一つとして、特に多いのが脊柱管狭窄症だ。
脊柱管狭窄症は、背骨が何らかの原因で異常を起こし、背骨で形成する管(脊柱管)を通る神経を圧迫する疾患であり、疼痛や麻痺を招いて日常生活に支障をきたすようになる。近年はスマートフォンの使用やデスクワークなどで長時間同じ姿勢を繰り返す若年者にも増えつつあるのが現状だ。
佐賀県武雄市にある新武雄病院は、高齢者が多い土地柄であるため、特に脊柱管狭窄症に対する治療を専門的に行ってきた。その陣頭指揮をとるのが西田憲記院長である。日本脊髄外科学会による認定のもと、後進を指導する立場にも就いている西田院長は「脊髄脊椎外科の治療は、整形外科でもなく脳神経外科でもない、脊髄脊椎外科を専門に治療しているチームが行うべき」と考え、実践している。
さまざまな年齢層への治療において、西田院長が共通して意識していることは、背骨の周囲の構造を極力温存することを目的に、最小限の術野から出血が少ない低侵襲手術を短時間で行うことだ。低侵襲な手術は患者の身体的な負担が軽く早期退院が可能な方法であるが、術野が狭いために、より高度な手術手技の技術が要求される。このため、入念な検査と厳格な適応判断が必要な方法とも言える。加えて何より再発させないことが脊髄脊椎外科の治療には必要だという。
最近は他院で手術を受けたものの、症状を再発させて同院を訪ねてくる患者が多くなっている。「脊髄脊椎疾患は加齢に伴って悪化するため、再発させないためにも将来を予測し、予防できるような手術方法を選択する必要があります」と西田院長は語る。特に、手術を通じて症状が軽くなることで、患者が今まで疼痛などによって十分に行えなかった身体活動を再開した結果、時間とともに今まで異常のなかった部位が新たに悪化する症例も少なくないという。「低侵襲手術は短期間の入院で済むものの、入院中に疾患、身体活動、日常生活活動など、患者さん個々の生活習慣に合わせた『知識の習得』が重要なのです」と西田院長は強調する。
症状が悪化する原因として多いのが、無理な姿勢や活動だ。日常生活や職場では常に姿勢に気を配り、疾患部位に過度な負担が加わらないようにしなければならないため、日常生活での活動方法の知識の習得が必要である。さらに、職場環境や仕事の内容などで腰や首に負担のかかる職業もあるため、それぞれの患者に合わせた治療方法やリハビリテーションでの教育が必要となる。
日常生活に関連する知識を習得するには、患者個々に合わせた実際の生活場面を想定したリハビリテーションが重要となってくる。同院では、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、その他病棟スタッフと連携したリハビリテーションを実践している。「脊髄脊椎外科医療チームは、それぞれが特化して研鑽を積んだ専門家であり、これは術後や退院後の不安軽減や、症状の悪化を防止し、安心した日常生活を送るために大変重要なのです」と西田院長。患者と医師を中心に治療方針を決定し、カンファレンスで同一方針の下で専門スタッフによるチーム医療で入院中および退院後の日常生活に対応できる体制こそが、この病院の脊髄脊椎外科治療の強みだろう。
佐賀県西部に位置する同院では県内および周辺地域に限らず、他県の医療機関からの紹介が増えている。短時間の手術で早期退院ができ、住み慣れた地域で自分らしい生活を送るためにも、治療とリハビリテーションとが両立した体制を整えた数少ない病院である。
- Information
- 受付時間:8:30〜11:30/14:00〜16:30
休診日:日・祝
診療科目:脊髄脊椎外科、整形外科、脳神経外科、外科、肛門外科、 呼吸器内科、
内科、総合診療科、消化器内科、循環器内科、泌尿器科、救急科、放射線科、
リハビリテーション科
〒843-0024 佐賀県武雄市武雄町富岡12628
TEL.0954-23-3111
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