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放射線の内照射とロボットによる
摘出で根治を目指す

日本で初めてピンポイントで留置する小線源治療を開始

 精子を保護し、栄養を与えるなど、前立腺は男性の生殖機能を担う重要な生殖器。ここに巣食う前立腺がんは加齢による男性ホルモンのバランスの崩れ、慢性的炎症、食生活や生活習慣などが発症要因とされる。症状がほとんどなく、遺伝性の高さで知られる。

「当院はこれまで、前立腺がんの治療で豊富な実績を残しています。限局性前立腺がんの標準治療である小線源治療を日本で初めて開始。多くの患者さんの健康の回復に貢献してきました」と話すのは同院の泌尿器科の矢木康人医師だ。

 小線源治療は放射線治療の一種。体外からの外照射と違い、放射線を出すシードと呼ばれる、直径1㍉長さ5㍉程度のチップ状の線源を腫瘍に留置して細胞を損傷し、死滅させる内照射という治療法だ。

「外照射は腫瘍周辺の他臓器も強く当たる恐れがあります。しかし、小線源治療は超音波で前立腺の形を確認しながら、尿道、直腸の位置などを避け、照射したい箇所にピンポイントでシードの留置が可能。これにより、腫瘍抑制はもちろん、副作用も軽減できるのです」

前立腺の形に沿って切離する側方アプローチを採用

 同院ではがんの悪性度が高く、腫瘍占有が大きい高リスク症例には小線源治療に外照射を加え、精巣などからの男性ホルモンの分泌を抑制し、がん細胞の増殖を抑えるホルモン治療をプラスした3者併用療法を選択する。

「3者併用療法は長期にわたり再発が抑えられるなど、治療成績の向上が期待できます。こうして現在、小線源治療はどのリスクにおいても用いられているのです」

 ロボット支援下前立腺全摘除術(RARP)にも定評がある。尿道と膀胱から前立腺と精嚢を切離して摘出、膀胱と尿道を吻合する手術だ。

「当院では前立腺の形に沿って切離する側方アプローチを採用。これにより膀胱頸部の温存が可能となり、腫瘍の取り残しを抑え、排尿機能や性機能が温存できます」

 矢木医師は早期に発見し、治療すれば恐れる必要がないと強調する。

「現在はPSAという簡単な血液検査で早期発見が可能。転移前に見つかり、適切に治療すれば根治が期待でき、性機能の保存も望めるのです。多くの男性、特に50歳以上の方々にはすべからくPSAを受けてもらい、早期発見に努めてもらいたいですね」

泌尿器科

矢木 康人

日本泌尿器科学会認定
泌尿器科専門医

医療新聞社
編集部記者の目

 泌尿器科の矢木康人医師はピンポイントで前立腺がんを死滅させる小線源治療の第一人者。取材中、しきりに強調していたのは前立腺がんの早期健診の必要性だった。
「PSA(前立腺がんの腫瘍マーカー)がよっぽど高ければ、血尿が出るだとか、痛みが生じることもありますが、多くはほとんど症状が出ないので厄介なのです」と表情を曇らせる。
「知らないうちに、どんどん進行してしまうことも珍しくありません。ですが、前立腺がんは健診して早めに見つけることができれば、ほぼ治せる病気であることも覚えておいてほしいですね」と笑顔。小線源治療で腫瘍を死滅できると語った医師の自信を垣間見た瞬間だった。

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