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昭和大学横浜市北部病院
消化器センター

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大腸がん早期発見に向け、
内視鏡を極め続ける

悪性で進行の早い陥凹型がん

 今や大腸がんは日本人がなりやすいがんの筆頭格となっている。一方で、早期に発見できれば、完治が望めるがんでもある。そのために有効な大腸内視鏡検査の精度向上と普及に尽力してきたのが昭和大学横浜市北部病院消化器センターの工藤進英医師だ。世界に先駆けての陥凹型大腸がんの発見、超拡大内視鏡とAI(人工知能)を用いた病理診断支援ソフトの開発など先進的な研究や取り組みを続けている。

 「陥凹型がんは見つけにくいうえに、悪性で進行が速いという特徴を持っているので、見逃してしまうと浸潤や転移が進んでしまいます」と話す工藤医師。

 大腸がんは、粘膜のポリープが悪性化してがんへと進行していくのが大部分とされていた時代に、周囲より浅く凹んだ陥凹型の存在を強く主張。「幻のがん」と言われ続けた。工藤医師による膨大な症例の分析で、その陥凹型は知られるようになったが、現在でもまだ見つける技術を持った医師は多くない。

AIを用いたソフトで医師の眼を補助

 「内視鏡検査での大腸悪性腫瘍の診断精度は80%弱と言われます。そこで、医師を支援し、正確な診断ができるソフトの開発に乗り出しました」

 それが、超拡大内視鏡を用いた病理診断支援ソフトだ。これは、大腸内の膨大な数のがんなどの病変を学習したAIが、内視鏡検査中に画像を解析して病変を検出すると警告を発する仕組み。つまり医師の目の〝補助〟の役割を果たす。現在では約540倍の超拡大内視鏡で細胞の核までも映し出すことができるため、従来は採取して行っていた病理診断がわずか0・4秒で可能となったという。

 「診断を支援すると同時に、経験の浅い医師が病変の形を学べるトレーニングにもなっています」

 自ら率いる消化器センターには、全国から若手医師が訪れ、工藤医師のノウハウを学んでいる。いずれ育った医師たちが内視鏡検査を通じて多くの患者を救うことが夢だ。

幅広い知見を共有して治療に生かす

 消化器内視鏡の領域で国内はもちろん世界をリードする昭和大学横浜市北部病院消化器センター。通常の医療機関では独立していることが多い消化器の内科と外科が一体となって、胃がんや大腸がんなどの治療にあたる。早くも20年が経過し、今では追随する医療機関も増えたが、当時この体制は、全国的に先駆けだった。

 消化器センターの設立の目的について当初から中心的役割を担っている工藤進英センター長は「内科医と外科医が互いの分野の知見を幅広く共有した上で、診断・治療に当たることが患者さんにより適切な医療を提供できると考えました」と話す。患者第一の発想こそがセンター化の原点だったのだ。

 一体化のメリットを内科の宮地英行准教授は「医療機関では一般的に、最初に患者さんに対応した科が責任をもって診断、治療にあたろうとするため、その科のやり方にこだわってしまいがちです。加えて担当科が変わる場合でも外来受診や転棟といった形式的な手続きのために治療までの時間的なロスが生じてしまいます。しかし、当センターでは、患者さんの検査の途中で内科と外科が話し合いながらどちらの治療が主になるのかが決まるので、より柔軟で適切な治療を目指せます」と説明。

 その治療方針を決めるのが毎週行われている内科・外科合同のカンファレンスだ。

 「手術症例と内視鏡症例、治療方針の判断が難しい症例など全てについて検討します。内科外科それぞれの医師が垣根を越えて意見を出し合うので、横断的な議論ができ、偏らずに治療方針を決めることができます」と内科の若村邦彦講師は話す。

  • 腹腔鏡手術の様子
  • 消化器センターのカンファレンス

患者の低侵襲を重要視した治療

 現在では、胃がん、大腸がんなどに対して内視鏡による治療が大きな力を発揮している。同センターでも目立って増えてきたのが、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)だ。リンパ節などに転移のない早期のがん病変を剥離し、切除するという治療法で、胃、食道、大腸へと適応が広がってきた。

 ESDのスペシャリスト、林武雅講師は「決して外科手術ありきではなく、ケースごとに患者さんへの侵襲も考えた上で、内視鏡で病変を取り切れると判断されたときに、的確に対応できることもセンター方式の強みだと思います」

 当然、浸潤がんや進行がんなどの内視鏡治療が不適応となる病変や腸閉塞や消化管穿孔といった救急疾患などでは、外科の果たす役割が大きくなってくる。

 肝臓疾患は馬場俊之准教授を中心として肝炎、門脈圧亢進症、肝癌の内科的治療を積極的に施行している。
 急性胆のう炎などの胆のう摘出手術(腹腔鏡)は外科の榎並延太講師を中心として174件(2018年1〜12月)の症例実績を有している。原発性肝癌、転移性肝癌、膵癌も積極的に治療にあたっている。

 外科の澤田成彦准教授は「内科単独では治療できない領域の疾患に対して、外科と放射線科などが協力して集学的治療にあたることもあります。病変を取り除くことを最優先に、どのような治療が適切なのかセンターが主体となって、患者さんにオーダーメードな治療を提供しています」と話す。常に腹腔鏡下手術施行時には手技に熟達した医師2人以上を参加させており、手術の安全性を追求しているという。

内科・外科が合同のハイブリッド手術も

 内科と外科が力を合わせて一つの手術に臨むハイブリッド手術も行っている。その代表例が消化管壁の粘膜下に発生する悪性腫瘍のGIST(ジスト)に対するLECSという手術だ。「これは、内科医による内視鏡手術と、外科医による腹腔鏡手術の合同手術です。双方が息を合わせた高度な技術が要求されますが、このようなケースでもふだんからの意思疎通のスムーズさが生きてくるのです」と澤田准教授は説明する。

 若手の医師たちが多数在籍するのも強みの一つ。内科の工藤豊樹講師、三澤将史講師、森悠一講師らは、人工知能(AI)を使った大腸がんの病理診断システムなどの先進的な取り組みにも携わっている。それに合わせるかのように、外科も切磋琢磨してセンターとしての実績アップに貢献している。

 外科の石田文生教授は「がんなどの悪性腫瘍は何よりも早期発見が大事ですが、治療となっても当センターでは、工藤センター長を先頭に、内科、外科の連携を生かして、患者さんのご期待に応えてまいります」と締めくくった。

消化器センター センター長
特任教授

工藤 進英(くどう・しんえい)

新潟大学医学部卒。秋田赤十字病院胃腸センター長などを経て現職。日本大腸検査学会理事長、日本消化器内視鏡学会名誉会員・学術評議員。

外科 教授

石田 文生

内科 准教授

馬場 俊之

外科 准教授

澤田 成彦

内科 准教授

宮地 英行

医療新聞社
編集部記者の目

 国内で大腸がんによる死亡者はここ数年男女ともに多く、内視鏡検査の重要性はいよいよ高まってきている。大腸に限らず、がんは早期発見が根治への近道だ。工藤進英医師に率いられた消化器センターは、臨床とともに先進的な内視鏡の開発にあたってきた。今ではこの分野で世界を引っ張る存在だ。拡大内視鏡と人工知能(AI)による大腸内視鏡検査は、患者のみならず、診断する医師側にも見逃しを防ぐなど多くのメリットがある。同センターには若い医師たちも多い。工藤医師の指導を受けて、多くの医師が治療の最前線で患者たちを救うに違いない。

Information

昭和大学横浜市北部病院
消化器センター

〒224-8503
神奈川県横浜市都筑区茅ケ崎中央35-1

TEL.045-949-7000

【初診受付時間】
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土   8:00~11:00

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