- 宮城県
一般財団法人厚生会
仙台厚生病院
肝腫瘍治療センター
集学的治療で肝がんの難症例に臨み、
国内トップクラスの症例数実績
肝炎から肝がんまで切れ目なく治療
肝がんは、早期発見しにくく、多くの場合肝臓の慢性疾患を伴っているため治療の困難ながんとして知られている。そのような肝がんに対して東北の地で、難症例を始めとして全国トップクラスの年間763症例※もの治療実績を誇るのが仙台厚生病院だ。同院の肝腫瘍治療センターで肝がん治療の指揮を取るセンター長の近藤泰輝医師は治療の難しさをこう説明する。
「病期も大事な指標ですが、肝臓の機能がどれぐらい残されているか(肝予備能)が治療のポイントになります。そのため、がんのみならず、肝炎や肝硬変の治療に習熟している必要があり、さまざまな術式と薬剤を効果的に適応させていくことが求められます」
肝炎から肝硬変、肝がんと進行していく疾患の流れの中で、切れ目なく最適な治療を模索している。
TACEとHAICでがんを縮小させる
同センターでは、最近の代表的な肝がん治療法である肝動脈化学塞栓療法(TACE)、持続肝動注療法(HAIC)、アブレーション治療(ラジオ波凝固療法、マイクロ波凝固療法)と、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤などの薬剤を用いるなど内科的なアプローチを中心に外科、放射線科とともに集学的に取り組んでいる。
「偏った治療法しかないと、効果的な治療法があったとしても治療方針を途中で柔軟に変えることができません。切除を含め、あらゆる治療法を高い水準で提供できる当院だからこその強みがあります」
中でも、進行した肝がんに対するTACEとHAICが特徴的だ。TACEは足の付け根や腕の動脈からカテーテルを挿入して、肝臓内の腫瘍を栄養する細い動脈に抗がん剤や塞栓物質などを入れて動脈の血流を遮断し、腫瘍細胞を壊死させる。一方のHAICは抗がん剤を肝動脈内に持続的に注入する方法だ。抗がん剤を末梢の静脈から全身投与するのと比べて、高濃度で病変に注入でき、より高い効果と副作用の軽減を目指せる。
近藤医師らは、肝予備能や病期に合わせてTACEとHAICを単独で行ったり、組み合わせたりするオーダーメイドな治療を行っており、進行がんでも腫瘍の縮小が期待できるという。
「腫瘍が小さくなれば、アブレーション治療を実施できるなど根治性を高めることが可能になります」
サバイバー生存率を高めるために
肝がんはいったん根治したとしても、新規出現が多いという特徴があり、他のがんよりサバイバー生存率が低い。そのため診断はより精緻さが求められ、治療も長期戦になる。近藤医師は「ほかの医療機関で手をつけられないと診断された患者さんにも、治療法を工夫して差し上げたいです。東京からも仙台へ治療を受けに来てもらえるような、ハイレベルな医療を提案していきたいと考えています」と意気込んでいる。
※2018年4月~2019年3月
センター長(肝臓内科科長)
近藤 泰輝
医療新聞社
編集部記者の目
全国トップクラスの肝がん治療の症例数を誇る仙台厚生病院。肝腫瘍治療センターの近藤泰輝医師はあらゆる治療法を総動員した集学的治療が同センターの特長であると指摘する。治療法の進歩でB型・C型といった肝炎ウイルス性の肝がんは減少が期待されるが、アルコール性肝疾患や非アルコール性脂肪性肝疾患が超高齢化とともに今後がん化していく可能性が高い。がん治療の鉄則は早期発見だが、近藤医師たちはそれぞれの疾患の状況に応じた柔軟で効果的な治療法の開発を怠らない。
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一般財団法人厚生会
仙台厚生病院
肝腫瘍治療センター
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