「断らない医療」を理念に地域の救急医療に尽力

　大阪府のほぼ中央に位置する松原徳洲会病院は、南河内エリアはもとより大阪市内、堺市などからも救急搬送を受け入れ、年間６６６４件※もの実績を持つ。

　「断らない医療」を理念とする同院で、最も重視しているのが「一人でも多くの患者を迅速かつ確実に治療する」こと。いつ発症するかわからない心筋梗塞などに対しては、心臓血管外科、循環器内科が精緻に連携したハートセンターで、常に緊急手術ができる態勢を備えている。

　大動脈の血管内膜が裂け、血管壁のすきまに血液が流れ込む大動脈解離や、大動脈瘤破裂も一刻を争う重篤な疾患だ。これらの治療は大動脈に特化して技術を高めてきたスタッフが揃う大動脈センターが担っている。
　「心疾患や大動脈の治療は、数分の差で結果が大きく違ってしまいます。豊富な技術と経験を持つ医師、看護師、臨床工学技士、診療放射線技師のチームでの厚い信頼関係のもと、各自が同じ方向を向いて能力を発揮し、迅速、確実な治療に力を注いでいます」と吉田毅院長は語る。

緊急の大動脈疾患に適応するステントグラフト治療

　大動脈の治療では、吉田院長のもとで行う人工血管置換術に加え、開胸が不要で迅速な対応ができるステントグラフト治療にも対応している。

　「解離の範囲が広い症例や、手術が困難な下行大動脈での症例など、低侵襲なステントグラフト治療で対応できるようになりました。多くの場合、30〜60分程度で治療が可能です」と語る阪口昇二医師。大動脈センターではステントグラフトの黎明期から治療に取り組み、大動脈疾患において数多くの実績を重ねてきた。血管が破れやすい中で迅速さが求められる同治療を正確に行えるのも、大動脈センターのこれまでの実績とチーム力があってこそだろう。

　大動脈センターでは、２０１0年に手術台に血管Ｘ線装置を組み合わせたハイブリッド手術室の環境を整備し、以来、大動脈瘤や大動脈解離などに対しステントグラフト治療の実績を数多く重ねてきた。また、最新鋭「320列マルチスライスＣＴ」を備え、迅速で精度の高い画像診断を実現している。こうしたハイスペックの検査機器も治療を力強く支えている。　

• ステントグラフト治療などを行うハイブリッド手術室
• 

　「今後、さらに医療技術が進歩し、これまで治療が不可能であった症例でも、新しいデバイスの登場で、低侵襲に治療ができる時代がくると考えています。そうしたことも見据えて、患者さんにとってのより良い治療を追求していきたいと思っています」と阪口医師は熱意を込める。

ドクターカーの出動で迅速性と確実性を追求

　一方、通常の救急搬送の受け入れと共に、並行して行っているのがドクターカーだ。要請を受けた病院に医師が直接駆けつけて患者を迎えに行く搬送システムで、年間の出動件数は１２５件※に達している。「要請先の病院で患者さんの状態を把握し、治療法をその場で決定。搬送している間に必要な手術室やスタッフの準備を並行して行い、無駄な時間を費やすことなく治療へとつなげることができます。１分１秒を争う救急の現場ではドクターカーのメリットは大きいと考えています」と吉田院長は手応えを感じている。他院から救急車で搬送される場合と比較し、治療開始までの時間を20～30分短縮できるという。　

• 他院に駆けつけて患者を迎えに行くドクターカー
• 

　迅速性と確実性を追求し、24時間365日、断らない医療を実践する同院は、地域の医療機関及び救急隊から絶大な信頼を得ている。これからも「最後の砦」として、地域の救急医療に貢献し続けていくだろう。　　

※2020年1～12月

取材／冨永雅裕