体への負担をなるべく抑える自然周期の不妊治療

　JR新宿駅にほど近く、西新宿にあるShinjuku ART Clinic。交通の利便性から仕事の合間を縫って治療に立ち寄るワーカーも多い一方、治療実績を聞きつけて関東圏、四国や沖縄県など遠方からも不妊治療の相談に訪れている。

　不妊治療が初めての人はもちろん、タイミング法や人工授精といった一般不妊治療から始め、高度生殖補助医療（ART）の適応が必要であれば体外受精を検討。妊娠後の不育症についても相談を受け付けている。

　体外受精ではなるべく体に負担をかけない自然・低刺激周期の治療を採用する。薬の使用は少なく抑え、検査の結果を細やかに判断し、患者の状態を見極めながら必要があれば卵胞のホルモンの感受性を高めるレトロゾール周期、もしくはクロミフェン周期を用いる。多くの排卵誘発剤を用いれば周期を調整しやすいが、非生理的な状態になるため、体への負担も大きくなり、採卵した月に移植を行うことが難しくなる場合や、翌月以降の卵胞の状態や採卵に影響がでるなどのリスクがある。

「自然周期を取り入れるメリットは体への負担が少ないだけではありません。採卵後の新鮮胚移植のタイミングや次の採卵を検討する必要がある時も、生理的な状態を崩さず良い状態で次の治療に進め、時期を逃しにくい点にもあります」と阿部崇医師は話す。

　ベストのタイミングで採卵が行えるよう365日採卵が行える診療体制を整え、採卵に用いる針は一般的な採卵針（19ゲージ）に比べ、先端に特殊な加工をした細い針（22ゲージ）を用いて組織へのダメージと痛みを抑えている。

「妊娠を望んで悩まれている方には、さまざまな不安がありますので、初診から時間をかけて説明し、不明なことも質問しやすいよう、患者さんのお話もじっくりと伺っています」と阿部医師は柔和に微笑む。

取材・文／宮川由香