- 大阪府
宗教法人 在日本南プレスビテリアンミッション
淀川キリスト教病院
低侵襲手術を中心に、徹底して患者に寄り添った
治療を実践
「ウルフ-オオツカ法」で脳卒中のリスクを低減
「不整脈の一種、心房細動になると2つの大きな問題が生じます。ひとつは脈拍が不規則になること、もうひとつは血栓症のリスクが生じることです」 と大阪市東淀川区柴島にある淀川キリスト教病院心臓血管センターの莇隆センター長は力を込める。
同病院心臓血管センターは心臓疾患治療のプロフェッショナル集団。心臓血管外科、循環器内科などの医師がチーム医療を実践する。
「心房細動は心房という部分がけいれんしたように細かく震え、心房内で血液がよどむ部分ができてしまう病気です。また心室という部分は不規則に動くようになります。有病率は全体(30歳以上)で0・9%ですが、70歳以上では2・7%(男性3・5%、女性2・1%)に達します。大きな問題は心房内で血栓(血の塊)ができやすくなり、それが全身に運ばれ、血管を詰まらせてしまう危険性があることです」(佐藤俊輔心臓血管外科部長)
血栓が脳に運ばれると、脳卒中となる。実際、心房細動由来の脳卒中によって大きな障害を負った人も多い。
同病院では心房細動に対して「ウルフ-オオツカ法」を採用。胸の横の数カ所に5㍉から10㍉程度の小切開を置き、そこからデバイス(機器)を挿入し、血栓ができる部位である左心耳を処理する。あわせて外科的アブレーション術(焼灼術)で心房細動そのものも治療する。
「最も大きなメリットは脳卒中のリスクを大幅に減らすことと出血に困る方の抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を中止できることです」(佐藤部長)
関西で安定してウルフ-オオツカ法を施行しているのは同病院のみとあって、新たにウルフ-オオツカ法の施行を計画している医療機関から指導を依頼されることも多い。佐藤部長は兵庫県など近県はもちろん、遠くは沖縄県へも足を運んでいる。
切除した左心耳の病理検査で心アミロイドーシスを発見
心房細動には心アミロイドーシスという難病が隠れているケースもある。アミロイドと呼ばれる異常なタンパク質線維が心臓に沈着し、心臓が硬くなり、膨らみにくくなる疾患。進行すると不整脈や心不全の原因となり、命に及ぶ場合もある。
「病理検査をしなければアミロイドを発見できないのですが、心臓の一部を採取することから体への負担が大きい。ウルフ-オオツカ法で処理した左心耳を病理検査に回すことで、発見が容易になりました」(佐藤部長)
このほか、弁が正常に機能しなくなる心臓弁膜症、狭心症などの冠動脈疾患、動脈瘤や解離などの大動脈疾患、脚の動脈狭窄といった末梢血管疾患などの手術治療を実践。心臓弁膜症(僧帽弁、大動脈弁、三尖弁のいずれも)はMICS(小切開低侵襲手術)で対応する。ケースによっては多枝冠動脈バイパス術もMICSで行っている。
MICS、特に完全内視鏡下MICSは①傷が小さく目立ちにくい、②術後の回復が早く、早期に退院できる、③感染リスクが少ない、④リハビリを進めやすいといった多くのメリットがある。臨床だけでなく、研究にも熱心で、関西におけるMICSの臨床・研究拠点のひとつになっている。
「地域医療の核」として70年近い歴史を刻んだ
淀川キリスト教病院は大阪の心臓部を流れる淀川沿いの一角に立つ。病床数581床(ICU12床、NICU21床、緩和ケア病棟27床を含む)を数え、「地域医療の核」として歴史を刻んできた。
「当院は全人医療をモットーにホスピタリティの高い病院と自負しています。私たちは患者さんに徹底して寄り添うことを自分たちに課してきました。病気に対して全力で立ち向かいます。重篤化しないように、そのためには早めの相談・受診を心がけてください」と莇隆センター長は呼びかける。
院長補佐・心臓血管センター
センター長
莇 隆(あずみ たかし)
心臓血管外科 部長
佐藤 俊輔
医療新聞社
編集部記者の目
JR新大阪駅から近く、市内はもちろん、府内・府外からも大勢の患者が訪れる。病棟は壮大で、廊下の端から見ると反対側の端が、はるか向こうに見える。1955年、米国長老会のブラウン初代院長によって創設以来、からだとこころとたましいに寄り添った「全人医療」を実践してきた。治療水準の高さはいうまでもないが、人格的に優れた医師、スタッフが多い印象。ドクターに会うと、ほっとする病院だ。
Information
宗教法人 在日本南プレスビテリアンミッション
淀川キリスト教病院
心臓血管外科、心臓血管センター
〒533-0024
大阪市東淀川区柴島1丁目7番50号
TEL.0120-364-489
受付時間 月~土 8:00~11:00
診療時間 平日 9:00~17:00(※午後は全て予約診)
土曜 9:00~12:00